【コラム】コロナ禍の人材業界の現状と今後

新型コロナウィルスの影響で、人材業界を取り巻く状況も大きく変化しています。人材は景気の影響をダイレクトに受ける業界の一つですので、影響が出るのは免れないところです。求人広告の掲載数を見てみると、今のところ大きな変化はないようですが、これから伸びは鈍化していくことが予想されます。要因として、増員の計画を一時的に見直すことに加え、現状では取材対応をするのが好ましくないと考える企業が多数ということが挙げられます。また、転職フェアの中止に踏み切る例などが出ており、フェアはセットで販売される求人広告にも影響を及ぼさないことはまずないと考えられます。そもそも、フェアの中止自体が転職市場にとって一つの大きな大ダメージです。

報道などでは、リーマンショック以上などとも言われています。リーマンショックの時も人材業界に身を置いていた自分としては、改めて今回の事態の大きさを思わざるを得ません。つい最近まではオリンピック以降、景気が後退するなどとの予測がありましたが、まったくそれどころではない状況に直面しています。世の中の安易な予測など何の意味もないことが実感されます。

およそ10年前のリーマンショックの時と比較すると、新型コロナウィルスの影響で起きている特徴的なことの一つに「外出自粛」があります。このため、事業によっては休業または廃業せざるを得ないような大ダメージを受けている共に、働き方にも大きな影響を与えています。その最たるものがテレワークです。

テレワークは2017年ごろから、東京都を中心に国を挙げて導入を進めてきました。目的はオリンピックに向けての交通の交通緩和と、多様な働き方の実現です。多様な働き方は、生産性の向上や人材確保が紐づきます。総務省によれば、導入状況は18年13.9%、2019年は19.1%と順調に推移しています。しかし、統計数字こそ出ていませんが、新型コロナウィルスの影響で、これまでとは比較ならないほど急速に普及されているとの報告もあります。

こうしたことから一つ考えられるのが、新型コロナウィルスによる、大きな働き方の変革です。これまで導入に対し迷いのあった企業もそうは言っていられなくもなり、好む好まざるに関わらず導入した。導入したところ、テレワークでも業務に支障がないことがわかった。それどころか非常に利便性が高い。となり、一連の騒動が落ち着いた後も、引き続きテレワーク勤務が続く可能性は十分にあります。

反対に、準備不足で見切り発車してしまったため、現場が大混乱していることも考えられるでしょう。そうなれば、外出自粛が取り払われた瞬間から通常通りの出勤が行われるばかりか、テレワークに拒否反応を示して、導入は以前の状況に後退するかもしれません。いずれにせよ、ここ数カ月とこれから先の数カ月場合によってはそれ以上の期間で、働き方にも強く影響を及ぼすと思われます。

一方で、振り返ってみると、新型コロナウィルスが出てくるまでは、人手不足で人材確保をどうするか、エンゲージメントを重視して社員の定着を図らねばならないと強く主張されていました。それが一転して、「雇用を守ること」が最重要課題の一つとなりました。同じことを言っているようですが、アプローチはまったく異なります。人手不足の人材確保から、人余りの雇用継続に変わってしまったのです。

3月26日に米労働省が発表した新規失業保険申請件数は328万件。前週は28万2000件だったので、なんと10倍以上に跳ね上がっています。2009年の最悪の週でさえ、申請件数は66万5000件だったとのことで、異常事態であることが際立ちます。日本でもリーマンショックの時はかなりの雇用調整がありました。この先、同様のことが起こるのでしょうか。

現在は10年前とは異なる時代です。希望的観測を含んでいますが、今の時代に一気に人員削減という手段は取りづらいような気もします。企業は何らかの準備をしてきたと思えますし、それこそ、エンゲージメントと言っていたのに手のひら返しの解雇では、不信を招いてしまうでしょう。一度失われた信頼の再構築は困難ですので、時期がくれば「アルムナイ」で再雇用というのも簡単にはいかないように思えます。

ただ、会社のソフト面(経営理念、組織文化、共に働く仲間など)に共感している人材であれば、一時的な会社の事情を理解し、緊急事態の措置に理解を示す可能性はあります。半面、ハード面(給与、待遇、福利厚生、会社規模など)に引かれて入社した人材は、この時期動くことは考えにくいですが、自分なりの「見極め」を行うかもしれません。このため、会社を知らしめるためのアテンションとしてのハード面は有効ですが、ソフト面への共感は早めに醸成してくのが得策と考えられます。

今の慌ただしい状況下では、日々の出来事に対処することに追われがちになりますが、一旦落ち着いてからは何をもってホワイト企業というのかという議論もより活発に行われていくような気がします。少なくとも働く人たちの間では、改めて自社との付き合い方を考える局面と言えるかもしれません。

とりとめもなく長々と書いてしまいました。私としては、これからも仕事、人、企業の理解を深め、時代を見ながら、時勢に合った求人広告を作り続けることが変わらず重要だと考えています。合わせて、人が企業や仕事に求めることをさらに追及し、制作に活かしていくつもりです。

一時的な好不況の波はありますが、私が主戦場としている中途採用の需要が今後なくなることはまずないでしょう。より一層の精進に努めてまりたいと思います。

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