中途採用とHRテクノロジー

このごろ、HRテクノロジー(HRtech、HRテック)という言葉をよく耳にします。人事界隈では聞かない日はないと言ってもいいかもしれません。それほどメジャーになってきたのですが、中途採用の領域では、あまり盛り上がってないような気もします。ここでは、HRテックがどんなもので、これからどんな活用が予想されるのか、見ていきたいと思います。

HRtech ニアリーイコール データ活用

一口にHRテックと言っても、実は複数にわたる領域があります。技術の観点からいうと、クラウドとデータで、この二つの技術が人事関連データの一元化、社員の行動分析、愛社心の醸成などに活用されるようになっていきました。このうち、注目度が高いのがデータ活用で、自社の社員のデータを集め、それを採用や配属に活かすことが盛んに行われるようになっています。

特に採用の領域でのデータ活用が活発で、事例も多く取り上げられています。グローバルでみても、HRテックでもっとも大きなマーケットの一つとなっています。おそらく、採用に関することが他社にとっても参考としやすいという事情もあるでしょう。配属やその他評価など人事関連は参考になりにくく、また、開示しにくいという事情もあるのではないかと思われます。

なお、データ活用はデータドリブンと言われることもあります。ドリブンはdriveの過去分詞形のdrivenを指します(drivenはドライブンとは発音しません、一応念のため)。データドリブンは日本語では「データ駆動型」と訳されることが多いようです。driveには「動かす」という意味もあるので、「データが動かす」みたいな意味なのだと思います。従って、データ活用とデータドリブンは若干、意味合いが異なるのですが、同じように考えてほぼほぼ間違いはないと思います。

採用領域での活用は新卒がメイン

データドリブンと切っても切り離せないのがAIです。AIは、大量のデータを集めることによってはじめて活用ができます。AIを活用するためにデータを集めていると言ってもいいので、HRテックとAIを同等に考える向きもあります。両者は明らかに別物ですので、分けて考えていたほうがいいでしょう。HRテックを主にとらえるなら、AIはHRテックの中の一つです。

そのAIですが、採用領域では、主に応募者の選考に使われています。具体的にはエントリーシートの読み込みです。大量に送られてくるエントリーシートの合否をAIが行うのです。ソフトバンクやセプテーニ、アマダホールディングスがAIでエントリーシートの読み込みを行っていることで知られています。ソフトバンクによれば、人による合否の判定とほぼ差異はなかったとのこと。また、セプテーニにはさらにつっこんでAIの活用を行っていることでも知られています。

3社に共通しているのが、いずれも新卒採用でAIの活用を行っていることです。既にお伝えしたようにAIは大量のデータがあって初めて活用できます。つまり、データを集められる状況でないと、そもそもAIの活用はできないということです。一定の規模のある企業が毎年、数百人単位の大量採用を行うからこそ、AIはその威力を発揮できるというわけです。

中途採用について考えてみますと、新卒採用ほどの規模で中途採用を行っている企業は極めて稀です。また、特定の職種・ポジションで採用を行うことがほとんどなので、データがたまりにくく、データドリブンとはいきません。従って、現状では中途採用の領域でAIの活用はあまり馴染まないのではないかと推測できます。

新卒と中途で、HRテックの使われ方は異なる

HRテックはグローバルで隆盛し、その流れが日本にも押し寄せてきてました。海外の採用と言えば、中途採用が主流ですので、日本の中途採用にも何らかの影響を与えると思います。ただ、海外のHRテックは、リクルーターの工数を減らすことが主な目的でした。国内でも、新卒採用における人事担当者の工数を減らすのを目的にすることが非常に多いです。

日本の中途採用は海外と大きく事情が異なります。転職回数も転職希望者も海外に比べれば非常に少ないです。このため、新卒採用で行っているように応募者の絞り込みや担当者の工数削減で使われることはないかもしれません。もっと別の分野、例えば、求職者の転職意向を高めるに面接や面談を分析する、その時にHRテックを活用する、などということがあると考えられます。

HRテックは新卒採用でかなり活用が広がってきました。中途領域でも活用はされていくでしょう。ただ、その際は新卒と同じような活用のされ方ではないはずです。日本独自の発展があると考えられます。中途領域でのHRテックに関する情報を、今後もキャッチアップしていきたいと思います。

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