新規求人はストップの傾向

新型コロナウィルスの影響が日に日に広がっています。首都圏ではいよいよ緊急事態宣言が出さることとなり、現在がいかに異常で危機的状況にあるか、より鮮明になりました。生活や仕事を通じ、経済に与える影響を実感していることと思います。中でも、新型コロナウィルスが求人市場にどのような影を落としているか。国内外の状況が活発に伝えられるようになりましたので、これまでの報道や統計数値を追ってみていきたいと思います。

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影響が本格化するのは3月以降

厚生労働省が3月31日発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は1.45倍でした。前月から0.04ポイントの低下となり、2カ月連続の減少です。1.45倍と聞いてあまりピンと来ないかもしれませんが、近年では低いほうの数値です。1.5倍を切るのは、2017年5月にまでさかのぼらなければなりません。同省は雇用情勢判断を下方修正し、6年9カ月ぶりに「改善」の言葉をなくしました。ただし、新型コロナウィルスの影響は「一部に出始めている」という表現にとどめ、「影響が本格化するのは3月から」と予測しています。

これについては、求人広告の作成に関わりながら実感できることです。2月以降、求人企業を取材する機会が減りました。キャンセル、延期などもあり、4月に入ってからは対面の取材を行わないことを明示する媒体社も出てきました(オンラインでのヒアリング、制作は随時行うとする媒体社もあります)。そこに緊急事態宣言ですので、そもそも営業活動ができない事態に陥ります。また、転職フェアなど大勢の人が集まるイベントが中止されているのも、雇用の機会が喪失されていることに拍車をかけているでしょう。

そもそも、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、求人を取りやめるケースも多発しています。毎日新聞には「(東京労働局によると)3月の都内の新規求人件数は中旬までで前年同期より約10%減少。求職者数も同5%ほど減っているが、来所を控える人が増えたとみており、実際の求職者数は把握しきれていない」との報道があります。

一方、求人があった場合、直面する問題として、就業開始日をいつにするかということが考えられます。内定が出され採用は決まったものの、入社初日はかなり先になる可能性も十分にあります。その間、賃金が発生しないので、求職者にはかなり厳しい環境だと言わざるを得ないでしょう。少しでも明るい材料を考えると、地方採用の広まりは考えられます。現在は対面での面接が実施しにくい状況です。打開策として考えられるのが、オンライン・Web面接です。現在はテレワーク勤務の導入が進んでいますので、これを機に、採用から就業まですべてリモートで行うことが常態化するかもしれません。すると、勤務地による地理的制限が解除され、地方採用も一気に広まることが予想されます。

雇用のあり方が見直されるか

海外に目を転じてみると、既に本サイトでもお伝えしましたが、アメリカでは新規失業保険申請件数(3月21日までの週)は、前週の28万2000件から328万件に跳ね上がりました。ウォールストリートジャーナル日本語版によれば、「3月の失業率は10%を超え、一部には20%を超えるとの見方もある(2月3.5%)」とのこと。また、「国の大半が閉鎖状態に向かっており、それが何カ月も続く恐れがある。こうした状況が長引けば長引くほど破産する事業者が増え、一時解雇が完全な解雇に変わる割合が増える。そうなれば、支出と雇用の両面で連鎖反応が起き、回復が難しくなる」と予想しています。

こうした状況の中、企業の取り組みとして注目されるのが給与削減の措置です。大幅な人員削減を回避し、雇用を継続するため、給与カットを実施する企業が出ています。同紙によれば、「米石油会社オクシデンタル・ペトロリアムは国内従業員の給与を一時的に最大3割カット。レストランチェーンのチーズケーキ・ファクトリーはオフィス勤務と調理担当の従業員の給与を最大2割削減。オフィス家具を手掛けるスチールケースは、一部の米従業員を対象に基本給と勤務時間を一時的に半減」などとするとのこと。また、ゼネラル・モーターズ (GM) は「給与を2割カットするが、2021年3月15日までに利子をつけて払い戻す」と伝えられています。

日本でも当然に雇用の継続を守る措置が取られるでしょう。ただ、同時に新しい動きが活発化される可能性もあります。実は、少し以前から、人手不足を背景に、「1億総活躍」を目指して「採用から労働力の確保」の転換が必要と言われていました。つまり、一人を採用し、その人に仕事をあてがというより、遂行すべき仕事がありそこに労働力を配置する、という考えです。すなわち、労働力の確保では、必ずしも正社員採用を行おうとはせず、むしろ積極的に短期の労働力の確保を目指します。言ってみれば、必要が生じた時に必要な労働力を外部から確保する「プロジェクト型」の採用です。この機会に採用、雇用のあり方が見直され、プロジェクト型採用を取り入れる企業が、より多くなるのではないでしょうか。

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2020年は一つの大きな境目となる

今、時代は大きく転換しています。もともと変化は起こっていたが、今回の新型コロナウィルスの影響で、変化に加速がついたという見方もできます。国内では、人材不足が喧伝される一方で、非戦力人員の余剰も指摘されていました。つまり、成長意欲をなくした一部の人材が会社に居座る、というものです。端的には、出世の可能性をなくした(出世争いに敗れた)人材の一部がその後、積極的に仕事に関わることなく、定年まで過ごす事態となり、会社経営を圧迫していました。

ところが、プロジェクト型の採用が広がれば、人材は常にスキルアップし、その道のプロになることを余儀なくされます。職業人のあり方としては、それが正しいと思います。会社側は、スキルと知見のある人材と確かな信頼関係を構築しなければなりません。それは単に優秀な人材を優遇する以上に、何らかの強い結びつきが必要な気がします。人材獲得競争と同時に、人材間でも自身のスキルや知見を競い合うことになるでしょう。これは非常に健全な競争と言えるはずです。

また、テレワークの導入が進んでいることは、既に指摘しました。2020年を境に働き方や雇用のあり方が大きく変わるかもしれません。今後の雇用情勢や人材業界、人と企業のあり方をますます注視したいと思います。

(まとめ)
・2月の求人倍率はやや低下。
・新型コロナウィルスの影響が本格的に出るのは3月以降。
・国内の新規求人は出にくい状況。
・アメリカでは失業率が10%~20%を超えるとする声もある。
・アメリカでは雇用継続のため、給与カットの実施も見られる。
・日本国内も雇用のあり方が変化する可能性がある(推測)。
・テレワークの導入で、働き方には変化が表れている。

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