【人事関連ニュース】自分で自分の給与を設定。制度の導入が進む

中小企業向けの新卒採用のコンサルティングなどを行う株式会社Legaseed(レガシード)はこのほど、自分で自分の給与を決定する「年俸合意書」を導入すると発表しました。自分で自分の給与を決めるのは、あるようでない制度です。明確な人事制度を持たない企業では「社長との面談で給与が決まる」ケースも見受けられますが、正式な制度として導入したのは珍しいと言えるでしょう。今後の各企業の給与設定への影響が注目されます。

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社員のモチベーション・エンゲージメントの向上が一つの狙い。

年俸合意書は8月から全社で導入される予定です。社員自らが「どこまでの成果を出すか」目標を定め、達成した時の給与額(年俸)を会社側に提案します。同社では、目標の達成度に応じて昇給額を決定していたものの、年次や社歴が長いほうが給与が高くなる傾向でした。実力のある若手社員をより正当に評価したいとの考えのもと、一年間のトライアルを経て正式導入に至ったのです。

社員は自らの給与を提示する時は、その根拠を説明する必要があります。同社では、給与の妥当性を示さねばならないことから、自分の市場価値を客観的に知るメリットもあるとしています。提案した給与が合意されれば、給与アップが見込めるとあり、社員からは「目標に対する意識が以前より明確になった」という声も聞かれたと言います。

年俸合意書を導入した背景として、物価の高騰に対し給与の据え置きが続いている状況を打破したいとの思いもあったとのことです。社員が自ら給与を決めることで、給与水準を引き上げ、その結果、日本国内の景気に好影響を与えたいと伝えられました。

レガシードは年俸合意書の正式導入を決めるなど人事制度の改革に取り組んでいますが、必ずしも正当な評価や給与決定だけが狙いではないと強調します。人事制度を見直すことで社員のエンゲージメントを高め、自己の成長を促しながら組織・事業の成長につなげます。その結果、世の中に多くの価値を提供し、社会への貢献を果たしたいと意気込みます。

給与の妥当性や自身の市場価値をどのように担保するか。

物価上昇に対する収入面の補完策として、副業の容認などが広まっています。自社では賄いきれない分を外部(他社など)から持ってきてほしいという対策と比較すると、成果に応じ自社で高い給与を支払おうとする年俸合意書は、ある意味でストレートな施策とも言えます。社員のパフォーマンスが上がれば、業績アップにつながりますし、社会に対しより大きな価値を提供できます。その分を社員に還元する施策なので、まさに「三方よし」の関係が築けるでしょう。

年俸合意書の発表からは読み取れませんでしたが、パフォーマンスが上がらなかった場合は、相応に給与がダウンすると推察されます。結果として、富の偏りが生まれないとも限りません。会社組織ですので、人によって給与の多い・少ないがあるのも当たり前と言えます。しかし、それでは制度の趣旨に反して、給与が下がることでモチベーションが低下する社員が一定数、出てくると予想されるでしょう。そうした事態にはどのような対策で備えているか、興味のあるところです。

他方、日本の給与は多くの場合は能力給で、基本的には社員を会社独自の基準で格付けして、対応する賃金を支払っています。つまり、あくまで会社の基準で給与が決まるので、同業他社や他社の同職種との比較が簡単ではなく、市場価値が測りにくいと考えられます。その点をどのように対処しているのか、深く探ってみるのは面白いかもしれません。

また、敢えて給与を抑え気味に設定し、その分、副業あるいは資格取得の勉強などをするという選択肢を容認しているのであれば、働き方に多様性をもたらすことができる可能性もあります。もっとも、年俸合意書の本来の趣旨とは逸れると考えられるので、容認しているかどうかは微妙なところがあるでしょう。こうしたことも含め、8月の正式導入以降、どのように運用され、どのような効果がもたらされるか、とても注目されます。

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編集後記

レガシードは2013年設立の社員数90人の会社です。「はたらくを、しあわせに」をビジョンに掲げ、中小企業向け新卒採用のコンサルティングをはじめ、社員教育のコンサルティングなどを手がけています。テレビ番組「クローズアップ現代+」や「産経新聞」「日経新聞」など多数のメディアに取り上げられています。また、『日本一学生が集まる中小企業の秘密』『伸びてる会社がやっている新卒を即戦力化する方法』など書籍も多く出版されています。新卒採用では毎年、約2万人の応募があるとのこと。人気を集めるのは、年俸合意書を含め、さまざまな先駆的な取り組みを行っているからだと考えられます。自分の給与を自分で決める制度の導入は、採用や定着が困難とされる若手人材への興味付けに一定の効果が期待できます。導入となれば、かなり大きな改革になると考えられますが、これからを見据え検討の余地はあるのではないでしょうか。

(参照)
https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=1949

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