フリーライターと年収、フリーランスの資産形成、貯蓄、将来

前回、フリーライターと年金にまつわる話を中心にしました。資産形成についても触れる予定でしたが、ほとんど言及できなかったので、今回はフリーライターの年収をはじめ、フリーランスの資産形成や貯蓄、将来を見据えた話をしたいと思います。資産形成とは簡単に言えば、将来に備えてお金を貯めることです。かつては貯金さえしておけば、難しいことは考えなくても大丈夫、という時代は確かにありました。しかし、今はそうは言っていられません。その理由も解説します。

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預金、貯金、貯蓄、資産の違いを整理

まずは誤解が生じないように簡単に言葉の説明をします。貯金と預金の違いは、お金の預け先の違いだと捉えてください。預金=銀行、信用金庫、信用組合など」、「貯金=ゆうちょ銀行やJAバンク(農協)、漁協など」と考えてほぼ間違いありません。かつては預金は企業向け、貯金は個人向けなどと言うこともあったようですが、現在は実質的な差はありません。預金と貯金をまとめて言う預貯金という言葉もあるくらいです。「銀行に貯金する」といっても通じますし、間違いとは言えないでしょう。むしろ実生活で「貯金は0円ですが、預金は1000万円です」などと言うと、間違いではないですが、変に思われる可能性は高いので、過度に厳密な使い分けはむしろ注意したいところです。

一方、貯蓄は少し性質が異なります。貯蓄は資産の総称です。つまり、貯蓄と言えば、預金・貯金をはじめ、タンス貯金、株、投資信託、債券、金(ゴールド)、保険などが含まれます。資産には土地、建物、機械設備なども入ってきますが、本稿では特に断りのない場合は、資産と言えば預金、貯金、株、投資信託などの金融資産を指すと考えてください。従って、本稿では貯蓄=(金融)資産で、資産形成と言えば、預金、貯金、株、投資信託などの金融資産を増やすこととほぼ同義だと考えてください。

なぜ預金・貯金では貯蓄ができないのか

1990年初頭までは銀行や郵便局にお金を預けておけば、十分に将来に対する備えができました。なぜか。金利が今では信じられほど良かったからです。難しいことを考えずとも、仮に定期預金でもしておけば、利子がついて勝手にお金が増えました。金利が5~7%もありましたからね。預けっぱなしにしておけば、それで十分だったのです。

もしかしたら金利5~7%の何がすごいの、と思ったかもしれません。どれだけすごいことか、具体的に示しましょう。手元に100万円あるとして、これを金利5%で10年預けたら、なんと約160万円になります。7%だと200万円を少し切るくらい。ほぼ倍になってしまうのでした。しかも、預貯金は元本割れの心配がなくノーリスクです。元本割れとは預けた元のお金で、この場合は100万円。預貯金は100万円預けて戻ってくるお金が100万円を下回ることはありません。株や投資信託は元本割れのリスクがあります。年配の方たちが「お金は貯金しなさい」というのもうなずける話です。

対して、2022年の定期貯金の金利はというと0.002%。ほぼゼロです。あってないようなものです。100万円を10年預けても、200円しか増えません。冗談のような数字です。1年でつく利息が100万円×0.002%(0.00002)=20円ですからね。利子にもまた利息が付くという複利の良さがまったく出ません。今の預貯金はまさに預けるだけなので、貯蓄を増やす、資産形成をするという意味では、あまり効果的とは言えないことを理解しなければならないでしょう。このあたり、1970~90年代初頭にかけて30~40歳代の現役バリバリで働いていた人たちとは感覚が大きく異なります。彼らは給与を銀行に預けていれば、お金が自然と増えていったのです。しかし、今はそうはならないのが現状です。

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預貯金に変わる資産形成の手段

預貯金でお金が増えない、資産形成にはちょっと弱いことがわかった。では、どうすればいいのか。これについては明確な答えはありません。代替案として、株式、投資信託、不動産投資などがありますが、はっきりこれだとは言えないのが現状です。ただ、いずれにせよ、投資のスタイルを取らなければいけないのは避けられないところでしょう。

投資は預貯金とは異なり、元本割れのリスクがあります。金融商品(株や投資信託、債券、保険などのこと)を買うことが投資の第一歩と言えますが、その金融商品は価値が上がることもあれば下がることもあります。仮に100万円で株を買ったとして、数年後に200万円になっていることもあれば、50万円になっていることもあるということです。預貯金の金利が5~7%の時であれば、元本割れのリスクを冒す必要性は高くありませんでした。しかし、今は預貯金でお金が増えないので、お金を増やしたいのであれば、リスクを取らざるを得ないのです。

始めやすい投資の方法の概要を説明

ここで始めやすい投資方法をいくつかご紹介します。ただ、あくまでただの紹介です。推奨ではないので、そのへん誤解なきようお願いします。また、簡単にどういう性質のものかを述べるだけにとどめます。世間で言われているあれはこういうことなんだな、と理解を深めていただければ幸いです。

株式投資
企業が資金集めのために発行しているのが株式で、証券口座を開設することで売買できるようになります。買った時の株価より高くなった時に売れば、その差額が儲かる仕組みです。また、年に1~2回支払われる配当金という預貯金でいう利子に近い感覚のものもあります。配当金のあるなし、株価に対して配当金がどのくらいのか(配当利回りと言います)は、企業によって異なります。配当利回りは平均で2%弱、4%を超えてくるとかなり良いとされます。預貯金代わりに株を買う人もいます。このほか、食品や金券がもらえる株主優待という制度を設けている企業もあります。なお、証券口座を開設するに当たり、ネット証券が利用されるケースが大半です。

投資信託
専門家にお金を払って(金融商品を買って)、お金を増やしてもらっている(ただし減ることもあります)のが投資信託です。ネットで証券口座を開設して投資信託という金融商品を売買するので、感覚的には株式投資と似ているところもあります。ただ、どちらかというと長期保有や積立貯金代わりに使われるケースが多く、長期的な視野で投資信託の額が上がることを期待します(投資信託の利益を運用益と言います)。また、分配金が支払われる投資信託もあります。投資信託がどれだけ儲かるかを示す指標の一つ利回り(投資元本に対する収益の割合)が10%を超えるものも少なからずありますが、その分、リスクが高いこともあります。投資の初心者は投資信託を勧められるケースが多いのですが、株式に比べると仕組みは複雑です。

一般NISA(ニーサ)
株式の配当金、投資信託の分配金や運用益、株式と投資信託の売却益(売って儲かった分)が非課税になる制度です(つまり、通常は税金がかかるということです)。NISAを利用する場合は、NISA専用の口座を新たに開設しなければならず、既に保有している株式や投資信託をNISA口座に移すことはできません。NISA口座では年間120万円まで投資でき、非課税期間は5年です。

積み立てNISA
NISAの投資信託積み立て版で、生じた利益は非課税となります。毎月決まった額の投資信託を購入し、長期的視野で資産を増やしたいという場合に利用します。ただし、購入できる投資信託には制限があり、基本的にはローリスクローリターンのものを対象としています。非課税枠は年間40万円で、期間は最大20年。一般NISAと積み立てNISAを併用することはできません

iDECo(イデコ/個人型確定拠出年金)
フリーランスも利用できる年金の制度できす。公的年金(国民年金と厚生年金)は保険料が強制的に徴収されますが、イデコは自らの意志で掛け金を支払います。実態としては、イデコ用の投資信託を買っているという感覚です。投資信託ですから、元本割れのリスクがあります。掛け金(月額最大6万8000円)は全額「小規模企業共済掛金控除」の対象です(要するに税金が安くなります)。原則60歳まで引き出すことはできませんが、その間、運用益は非課税となります。

フリーランスの5割は年収400万円未満

フリーライターをはじめフリーランスが始めやすい資産形成の手法をざっくりと紹介しました。細かく説明するときりがありませんし、投資や資産形成の手法は他にもさまざまなあります。紹介したのはほんの一部のさわりです。肝心なのは株式や投資信託に理解を深めることではありません。資産形成についていくつかの手段があることを知り、自分に合ったものを選択することです。

本稿では資産形成=投資のようになっていますが、資産形成の手法は必ずしも投資だけとは限りません。「投資なんかに時間をかけているのなら、本業を頑張りたい。年収2000万円になって、そのうち500万円を毎年貯金する」という選択があっても当然いいわけです。500万円貯金しても利子はほとんどつきませんが、年収500万円で毎年50万円を投資に回しているというケースに比べてインパクトが違います。断然500万円貯金したほうが貯蓄は増えていきます。

なお、フリーライターの約5割が年収400万円未満だと言われています。他の職種を含めフリーランス全体でも約5割が年収400万円らしいです。仮に年収400万円だとして倍にしても2000万円には届きません。今の仕事量を倍にすることで実現できるのは年収でマックス800万円。さらに稼ごうとすると、これまでにない、自分にとって革新的なことを行わなければなりません。私は「10倍稼ぎたいなら10倍楽になる方法を考えなさい」とアドバイスされたことがあります。時間は有限ですからね。なるほどと納得しました。

時代は良くなる一方と捉えることができる

再度投資の話をして恐縮ですが、投資には元手が必要です。手元に資金がないのに、投資に手を出したり、そもそも資産形成を考えたりするのはナンセンスでしょう。すると、やはり「本業で稼ぐこと」を考えるのが、資産形成の本筋かもしれません。ある人は「お金がなくなったら本を書けばいい」と言い放ちましたが、この人は本が売れなくなった、または書けなくなったからお金がなくなった、という発想はまったくしないのだと思いました。なんだか冗談のような話ですが、あの人の姿が本当なのかもしれないと感じたものです。

最後に、貯蓄や資産形成、投資の話をすると、何となく未来が重苦しく感じますが、個人的には時代は良くなる一方と考えるのが妥当、つまり未来は明るいと捉えています。根拠としては、10年前に困難だったことが今はやすやすと出来るようになり、かつては見向きもされなかったことにも焦点があてられるようになっているからです。

例えば、2000年代に生まれた人は、かつては調べ物をするのに図書館まで足を運んでいたなんて信じられないでしょうし、ケータイ・スマホがない時にどのように人と連絡を取り待ち合わせていたのか想像もつかないでしょう。そもそも30年ほど前は携帯電話は一部のお金持ちだけが持てるツールでした。社会が成熟することで社会課題にも目が向けられ、イノベーションが起こっている例も多々あります。

こうしたことを考慮すると、やはり未来は良くなると想像できます。ただ、それと資産形成の話は別に考えないといけませんけどね。未来をより明るくする戦略の一つとして資産形成があると考えるとしっくりくるような気がします。

まとめ

預金や貯金の違いや、貯蓄、資産形成の意味など、基本的なところから解説しました。資産を増やすという観点では、現状では預貯金はあまり効果的ではなく、株式や投資信託などの投資を行うのが代替案として有力です。一方、資産形成の手段は投資に限りません。本業の儲けを高めるのも有力な手段の一つと言えます。考えなくてはならないのは、これからの将来、未来に向けてどのような戦略を取るかということ。会社員であれば必要な情報を会社側が用意していることもあるでしょう。しかし、フリーランスはそうはいきません。自らの理想の未来に向け、歩みを進めていければ幸いです。

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