【コラム】事業継承サイトの必要性
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後継者不足の現状

少し前から今後「事業継承サイト」という類のいわゆるマッチングサイトの重要性が高まるのではないかと感じています。帝国データバンクによれば、「2019年(1~12月)の「休廃業・解散」件数は、全国で2万3634件(前年比2.6%増)判明。前年(2万3026件)を608件上回り、3年ぶりの増加に転じた。なかでも、経営者が自主的に経営や事業を畳む「休廃業」(1万2764件)の件数は、2012年以来7年ぶりに増加」となっています。

休廃業・解散の大きな要因となっているのが、後継者不足です。中小企業庁は「今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定。現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性」と伝えています。

現在は新型コロナウイル関係の経営破綻が増えています。事業継承とはまた異なる問題が生じたわけですが、だからといって、事業継承の必要がなくなることはありません。むしろ、危機的状況に直面することで、より事業継承の必要性が増したはずです。このままにしておくと加速度的に経営破綻の時期が早まるでしょう。このため、一定の知見や経験を持った人材と、後継者に悩む中小企業・小規模事業者を早期にマッチングさせ、事業を継続させると共に、その事業が有する独自の技術力やノウハウを継承し、存続させることが求められるのです。

後継者不足の企業と、事業継承を望む人材のマッチングを図る。

こうした事態を受け、例えば、人材採用に実績とノウハウを持つ人材サービス企業が、後継者を求める企業と、事業継承を望む人材のマッチングを図る「事業継承サイト」を立ち上げるのは、とても有用なことだと思います。一方で、人材サービス企業が持つノウハウは、あくまで後継者として人材を募集することです。つまり、掲載企業は社員を募集するのであり、事業継承されたか否かの結論は、場合によっては、数年先にしかわからないことになります。

結局、これだと事業継承に特化した専門サイトが一つできるだけで、それそれでやる価値は十分にあると思いますが、本来の目的の事業継承という達成は難しくなります。企業も人材も共に買収(M&A)をして早期に事業を引き継ぎたいと考えるケースも多くあるはずです。実際、近年は一般の会社員が専門家のアドバイスを受けながら企業を買収し、事業を継承・立て直しし、年間1000万円以上の利益を生むことに成功している例も少なからずあると言います。

人材サービス企業がないのは、事業買収や財務などのノウハウです。これらのことは、専門家と協業することが解決の一端になります。かつ深く買収に関わってもらうため、マッチングが成立し買収した後はコンサルティングも行い、利益の数~数十%をコンサルティングフィーとするなどの制度が考えられます。もちろん、このあたりのことは、コンサルティング契約は有期にするか無期にするか、サイト側はいくら取るかなどさらに詰めて考えなければならないのですが、それらのことはここでは一旦置いておきます。

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人材サービス企業ならではノウハウも活きる。

重要なのは、後継者が見つからず困っている企業や経営者が事業継承の意志のあることを早期に公に訴えることです。企業取材や経営者インタビューに実績とノウハウのある人材サービス企業なら、事業の魅力や経営者の思いも伝えられるはずです。

財務などの数値で現状を明示することは当然に必要なことですが、それだけでは、企業の良さや事業継承の意義を読み取ることはなかなかに困難です。数値には表れないものが、本気で事業を継承しようとの思いを起こさせることもあるのではないでしょうか。最終的には企業側と人材で面談、実施で企業や事業を確かめることは欠かせませんが、サイトを通じて一定の事前情報は伝えられるはずです。

また、人材サービス企業が行うことで、ミドル・シニアの転職先、あるいは、人生100年時代に備え社長・事業主として新たなスタート、という打ち出し方ができるかもしれません。事業継承に悩む中小企業・小規模事業者の問題を解決しながら、同時に雇用の創出も行える可能性があるのではないでしょうか。このことからも、サイトを構築する意義は十分にあると考えられます。

事業継承をなんとかしようという動きは既に世の中に出始めているようです。より活発になればとの思いを込め、人材サービス企業が事業継承サイトをスタートさせる有益性など提示させていただきました。

【追記】
毎日新聞に下記のような記事が出ていました。

コロナ禍だから急ぐ「中小企業の事業承継」待ったなし
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20200605/biz/00m/020/004000c

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