求人広告のキャッチコピーは短いほうが良いか、長くても大丈夫か

求人広告のコピーは短いのがいいのか、それとも長くてもいいのか。あるいは効果的な文字数はあるのか――。この疑問はよく聞かれ、制作現場でも意見の分かれるところです。今回はコピーの長短について、解説と検証をしていきたいと思います。

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そもそもコピーとは。

コピーライターは当たり前のように「コピー」という言葉を使いますが、そもそもコピーとは何でしょうか。長短の優劣を考察するには、まずこのことに対する理解と整理が必要です。コピーとは日本語で言えば「広告文」です。つまり、広告に書かれた文章(文字)は、キャッチコピーも含めすべてコピーとなります。求人広告で言えば、仕事内容欄や応募資格欄、インタビュー欄もすべてコピーということになります。ただ、全部を一緒くたにコピーとするのは業務を進める上でも齟齬が起こりやすく、コピーライターや制作スタッフはPRスペースに書かれた文言に限定して「コピー」と言っていることが多いです。

一方、おそらく、多くの人がコピーと言われて想像するのが「キャッチコピー」でしょう。キャッチコピーは通常、広告の一番目立つところに書いてあり、新聞や雑誌などの「見出し」に該当します。また、キャッチコピーの下に書かれた、一定の量のある文章を特に「ボディコピー」と言います。つまり、コピーライターがコピーという場合はキャッチコピーとボディコピーを含めた部分を指しています。ただ、キャッチコピー、ボディコピーという概念がメジャーではないことも十分に理解しているので、単に「記事」や「見出し」、「本文」などと言うことも少なくありません。

前置きが長くなりましたが、お伝えしたかったのは「コピーは短いほうがいいのか、長いほうがいいのか」という疑問は、対象とするコピーをいくつかに分けて考える必要があるということです。このことを踏まえた上で、今回は「キャッチコピー」を取り上げます。

まずは「伝わる」ことが大前提。

(キャッチ)コピーは短いほうがいいのかという問いは「キャッチコピーは短くなくてはいけないのか」という問いとほとんど同等であると考えられます。この問いが出てくる背景には「キャッチコピーは短い言葉で伝えるもの」という通念というか信念というか、一種の信仰みたいなものがあると思います。

しかし、キャッチコピーの長短を論ずる前に、もっと大切なことがあることを認識しなければなりません。それは、伝えたいことがきちんと伝わるのか、すなわち、意味を成しているか否かです。短さにとらわれるあまり、意味が通じなくなっては元も子もありません。まずは伝えたいことを伝えることが第一義にあるとお考えください。時に長くなったキャッチコピーを短くしようと言葉を削り、結果、文としては成り立っているが、違った意味に捉えられることもあります。その時は、意味を重視して元の長いままにしたほうがいいでしょう。また、文として意味を成すことが第一義ですので、言葉を崩して、文法を無視するような書き方は好ましくありません。キャッチコピーとはそういうものではないかいう声もあるようですが、それはまったく誤解。少なくとも、求人広告では言葉遊びのようなキャッチコピーは作るべきではないのです。

もしかしたら、「基本的には短いのが前提」で場合によっては長くなってもいいということなのかと解釈されるかもしれません。確かに、キャチコピーは「短いのが前提」で、100文字200文字と書いてしまうのはおかしなことです。ところが、ここが難しいのですが、何字までが良くて何字からが不可となるという明確な基準はありません。また、短ければ短いほどいいというものでもないことは、ぜひ覚えておいてほしいと思います。私自身、平仮名一文字のキャッチコピーを作ったことがありますが、それが究極だということが決してないことは、容易に理解できると思います。これに加え、近年はWeb検索との関係で、一定の文字数などを求める傾向も出てきました。これについては後述します。

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伝えたいことを「速く」「強く」伝える。

なぜ「伝わる」ことを重視するのか。求人広告のキャッチコピーの役割と意義の側面から考えましょう。キャッチコピーは端的には読者(ユーザー)の注意を引き付け、広告しているもの(会社や仕事など)の魅力を伝えることにあります。それも、可能な限り「速く」「強く」伝えることが理想です。特にdodaやエン転職などの求人媒体に載せる場合は、たくさんの求人広告が並ぶ中で、いち早く自社の求人に注意を向けてもらう必要があります。このため、「よく考えなければ意味が通じない」キャッチコピーは勝負の土俵から早々に降ろされてしまうというわけです。また、求人媒体に載せない場合はいち早く求人だと気づいてもらうために、それはそれでまた別のスピード感が求められます(単純には、「求人」またはそれに類する言葉がどこかに必要になります)。「強さ」は求職者(ターゲット)の心にどれだけ突き刺さるかというところにかかってきます。キャッチコピーを見ただけで、少なくとも「この求人広告をもっと読んでみたい」と思わせなくてはいけません。このため、ターゲットをよく理解し、良い方向に気持ちを揺れ動かすような「強い」言葉が必要になるのです。

求人広告のキャッチコピーは、よく見かける、いわゆる企業広告のキャッチコピーとは趣を異にします。「最終的には広告を見て応募してもらうこと」という明確なゴールが設定されていますので、ターゲットを設定せずになんとなくふわっとした文言でイメージアップを図る企業広告とは相容れないところがあります。特に中途採用向けの求人広告は多くの場合、職種別に採用を目指していることもあり、ターゲットを細かく限定し、言葉選びもよりシャープなものとなります。求人広告に近いのは通信販売の広告ですが、転職(就職)の決断は物品やサービスを購入するほどの気楽さはありません。このため、通信販売では半ば常とう手段となっているあおり系の文言や一種の軽さを伴ったキャッチコピーは時に大きな効果を発揮するといえども、使い方に注意が必要で、敬遠される傾向にあります。

ちなみに、ふわっとしたキャッチコピーとは、「創る、未来を。創る、私たちの手で」みたいな感じの、何かを言っているようで何も言っていないキャッチコピーです。何となく座りがいいのでついつい作ってしまいがちですが、効果的とは言えないのでおすすめはできません。これなら「未経験歓迎。営業職に興味をお持ちの方、ご応募ください」くらいのほうがまだましとも言えます。

Webへの対応。

ご存知のように、近年は求人広告の多くがオンライン上で出稿されています。この関係で、「(Web)検索に引っかかりやすいこと」が求人広告の出来を左右する一つの要素になっており、いわゆるSEO対策が盛んに行われるようになりました。特に各媒体が意識しているのが求人専門の検索エンジンindeedの存在です。このことがキャッチコピーのあり方にも影響を及ぼすようになっており、先にも少し触れましたが、媒体側の方針で一定の文字量を求められることもあります。

また、厳密にはキャッチコピーと言えるかどうか不明なところもありますが、求人ページの目立つ個所に「年間休日120日」「給与30万円以上」「勤務地限定」などのキーワードを羅列することが求められることもあります。これも明らかに検索エンジン、特にindeedを意識してのことです。このため、一部でキャッチコピーのキーワード化と言えるような現象も生じています。ただ、媒体ごとにばらつきが見られ、SEO対策はその手法が確立されていないことがうかがえます。Webの特性上、対策が確立されることは今後もまずないと考えられ、有効な策が出てきたら、その都度、ある意味で小手先の変化のようものが求められるでしょう。

媒体の特性に応えるのは、コピーライターを含め制作者の一つの役割です。実際問題として、文字数の増減やキーワードを反映させるなどの要求に応えるのは、それほど難易度の高いことではありません。ただ、技術的な要求・変化に対応しただけでは、求人広告の制作者として、十分や役割を果たしたとは言えないでしょう。コピーライターの役割はいつでも、ターゲットを採用できる求人広告を作成することです。効果を出さなくてはなりません。この当たり前のことを忘れることなく、求人広告と向かい合い続けたいと思います。

まとめ

・キャッチコピーは短いほうがいいとは限らない。
・ちゃんとした意味を成すことが重要。
・キャッチコピーだからといって、言葉や文法を崩す必要はまったくない。
・正確さに加え、求人広告では「速さ」と「強さ」も求められる。
・Webや媒体の特性に合わせた書き方も、今後はますます重要になると思われる。
・ただし、あくまで採用につながる制作をすることが常に最重要課題。

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