人材要件の設定方法と、求人広告の訴求点の見つけ方

求人広告で何を魅力として打ち出していいのかわからない、という声は多くあります。今回はそうした声に応え、求人広告を作成する際、どのように訴求点を見つけていくか、その手法をお伝えさせていただきます。コピーライターが実際に使っており、かつ効果を狙える手法です。ぜひ下記をお読みし、試していただければと思います。※より詳しい求人広告の作成方法はこちらにもあります。また、本編で言う求人広告は主に中途採用向けを指しています。もちろん、新卒採用にも応用は可能です。

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まずターゲットを理解しよう

なぜいきなりターゲット、つまり人材要件の話になるのか。求人広告を通じ自社の魅力を伝えるのだから、まずは自社を知ることではないかと疑問に感じたかもしれません。それはもっともなことで、実際に自社への理解を深めることは、欠かせない工程の一つです。特に、自社の強みや弱みを知りながら、普段はあまり意識しない「採用上の競合との力関係」や「自社の採用力」を知ることはとても重要です。

それにも関わらず、なぜ最初に人材要件のことを持ち出したのかというと、意識をターゲットに向けてほしいとの思いからです。多くの場合、自社への理解に比べるとターゲットへの理解は乏しいものです。ターゲットのことは一度も考えたことがないというケースも珍しくはありません。しかし、求人広告はあくまでターゲット(求職者)が読むものです。また、応募する・しないの判断は、100%ターゲットに委ねられています。つまり、求人広告はターゲットに合わせたものでなくてはならず、自社の魅力や思いの押し付けであってはいけないのです。ただし、これはターゲットに媚びを売れと言っているのではありません。あくまで、ターゲットに自社への応募を促すために理解が必要なのです。

加えて、中途向け求人広告の一つの大きな特徴について知ってほしいと思います。それは、中途向け求人広告はターゲットを細分化・明確化するということです。他の広告物あるいは出版物がターゲット(または想定する読者層)を広くざっくりととらえるのに対し、中途向け求人広告は可能な限りターゲットを絞り込み、極端な話、最終的に一人に絞り込みます。これは特殊な例ではなく、よく起こり得ることであり、実践的なノウハウの一つです。なぜ一人にまで絞り込むかというと、結局採用するのは一人だから、ということに行きつきます。広告は文字通りに解釈すると広く告知するものですが、中途向け求人広告に限っては、一人に向かって語りかけるもの、あるいはその側面を強く持つ広告というふうにご理解ください。

ターゲットを理解するとは

何をもってターゲットを理解するあるいは理解したと言えるのか。ターゲットの理解は、概ね以下の3つの側面から行います。

(1)経験や能力(いわゆるスペック)
(2)人物像・志向性(リーダー、コツコツ、誠実、社交性、上昇志向など)
(3)転職の動機

このうち、もしかしたら(3)はあまり耳慣れないかもしれません。ただ、求人広告独自の観点で、訴求点を見つけることに関してはもっとも関係の深い項目と言えます。

転職するからには必ず何らかの理由があります。その理由は、求職者が抱える課題や理想とも言い換えられます。つまり、転職は課題の解決や理想の実現を目指して行われると言え、結局、求職者は課題の解決や理想の実現が目指せそうな企業を探しているのです。すると、もっとも強い訴求とは、求職者の課題を解決し理想を実現できる要素を提示することとなります。

具体的には、例えば、求職者がワークライフバランスを求めて転職に踏み切るのであれば、自社に残業が少なく十分な休みが取れることをアピールするという流れになります。もちろん、実際の求人広告の制作では、残業や休みのこと以外の魅力も当然に提示し、ワークライフバランスを軸としながら全体を設計していくことになります。

もしかしたら、実際に話を聞いてみないと転職の動機などわからないと思うかもしれませんが、この場合、転職の動機はあくまで想定です。考え方としては、求職者の志望動機を用意するというような感覚です。当然のことながら、自社にないものを訴求の要素することはできません。もし残業も多めで休みも少なめの会社であれば、上記のワークライフバランスを求める求職者をターゲットにはできないわけです。

ここまでお読みいただき、とても当たり前のようなことを言っていると感じたかもしれません。しかし、実際にはこの当たり前のことがなかなか発想できないケースが多いのです。それというのも、ついつい自社の魅力ばかりに目が行ってしまうからです。ターゲットが置いてけぼりになりますが、それでは訴求点は見つかりません。ターゲットの目線で考えることで訴求点は見つけやすくなります。ターゲットの目線を得るために、簡単かつ有効な手段として、ターゲットの転職の動機を想定する、とお考えください。

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最後は現実味があるターゲット設定になっているかをチェック

(1)と(2)についても、ざっと見ていきます。(1)はターゲットと言って、真っ先に思いつくことでしょう。自社が必要としている経験や能力を具体的に提示します。学歴、資格、免許をはじめ、年齢や性別なども合わせて列挙します。ターゲットを理解する段階では、求人広告に書く書かないを考える必要はありません。採用の要件とするものはすべて把握しておきます。

経験が不要な場合は、未経験ターゲットとして扱います。ただし、特定の学部・学科または専門学校卒であることや資格(実務経験は問わない)、特定の業界や職種の経験などが採用の条件となる場合は、そのことを明確にしておきます。単に未経験とひとくくりにすると、ターゲット設定の精度が落ちますし、当然、応募効果(有効応募の数)も落ち込みます

(2)も理解がしやすいはずです。求める人材の役割や社風などに合わせて、「こんな人物だと理想的だ、自社に合うだろう」というのがあると思います。それらを列挙します。よく「元気で明るければ誰でもいい」とする声を耳にしますが、その場合でも、コツコツ仕事をするタイプ、周囲を引っ張っていくタイプ、言われたことをきちんとやるタイプなど、その他、求める要件があるはずですので、じっくりと考えてみてください。

求人広告では、「明るい」などの性格を表す言葉の表記はできませんが、この段階では気にする必要はありません。必要または望ましい要素を書き出します。ただ、あまりに相反する要素がある場合は、いずれか一方を取り除きます。例えば、明るいと寡黙などです。

(1)~(3)の人物要件は最終的に調整します。あり得ない設定になっていないかを確認します。自分たちの理想をぶつけすぎていないかチェックしましょう。「こんな人材どこにいるんだ」「こんな人材がウチに来るわけねえ」という状態になっていたら、現実味があるように調整します。ただし、あまり設定を緩くし過ぎると、求めている人物からかけ離れてしまいます。現実味がありながら、かつ採用したい人物の要素がしっかりと組み込まれているターゲット設定となるよう調整します。

訴求点が見つかったら一貫性を持たせる

ターゲット設定が完成したのとほぼ同時に、訴求点も見つかったことに気づくはずです。ターゲットを見つけることは、実は訴求点を見つけることにつながっていたのです。中途向け求人広告ではターゲットを非常に重視しますが、その理由の一端が伝わったのではないでしょうか。

訴求点が見つかったら、求人広告の具体的な作成に入っていきます。作成のポイントや注意点は細かくいくつもあるのですが、一つ挙げるとすると、一貫性を持たせることです。一貫性というのは、簡単に言えば、どの部分を読んでも訴求点とつながっている、相反しないことだと捉えてください。もちろん、全体的なトーンも統一します。

例えば、「ワークライフバランスが保て、働きやすい会社」が訴求点だとしたら、全体を通じ、そのことがしっかりと伝わるようにします。ある部分から急に「残業するしないは本人の自由で、やる気を持って業務に当たり、結果を出したらその分はしっかりと報酬やポジションで還元します」などし始めたら、ビックリするでしょう。ここまで極端な例は少ないですが、なぜここでこの話が始まったんだ、みたいのは時折見かけます。よくある例としては、未経験歓迎、未経験に優しい会社、未経験こそ求めている、と訴求しているのに、転職者インタビューで経験者が出てくる、応募資格で経験者優遇と書いてしまう、などでしょうか。部分は全体を反映します。求人広告を作成する際は常にターゲットと訴求点を意識することが重要です。

ターゲットが求人広告のどの部分から目を通すかわかりません。キャッチコピーかもしれませんし、給与欄かもしれませんし、応募資格かもしれません。データでは、給与欄や応募資格から見ることが多いとされていますが、いずれにせよ、どこから目を通すかは不明なところが多いわけです。このため、ある部分に全体の趣旨とは異なる記述があり、たまたま最初にその個所を見たターゲットがそこで読むのを止めてしまうということも起こり得ます。その結果、応募がゼロになるとは言いませんが、ターゲットに違和感を抱かせてしまう記述はマイナスになるので、避けるべきでしょう。

以上、訴求点の見つけ方、それに合わせてターゲット設定の方法、求人広告の制作上のポイントなどを解説しました。いずれもすぐにでも使え、かつパワフルなテクニックです。ぜひ活用してみていただければと思います。

まとめ

・訴求点を見つけるには、ターゲットについて考えるのが手っ取り早い。
・特に中途向け求人広告では、ターゲット設定が重要。
・ターゲットを理解するために、なぜ転職するのか、転職の動機を考える。
・ターゲットの転職の動機を考えると、訴求点も見えてくる。
・求人広告を作成する上で大きなポイントの一つが全体の統一感。

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