求人広告や採用ホームページなどで、必ずと言っていいほど出てくるのが、先輩インタビューです。実際に入社した先輩社員が、会社や仕事の実態を語るくらいの意味合いで受け止められていると思います。なんとなく先輩の口から語らせておけばいいだろうとなりがちですが、もう少し深い意味と役割があります。特に採用HPでは主役と言っていいほどの立ち位置なので、この機会に先輩インタビューの本来の役割と、書き方についてご紹介していきたいと思います。
先輩インタビューのポイントは共感または憧れ
先輩インタビューの役割は共感または憧れのいずれかである場合がほとんどです。とりわけ、中途向けでは8~9割がたが共感狙いです。ターゲットに「私と同じような境遇(職歴、家族構成、スキル・経験など)の人が、私が持っているような思いを抱いて転職を決意して、この会社に入社したんだ。仕事はこんなことをしているんだ。この人もやれているみたいだし、私もできそう」と思わせればベストです。
こうしたことから、実はインタビューでは人選が非常に大事です。ターゲットをイメージし、その人物像に近い方を社内から選び出してもらうのが理想です。例えば、「営業を業種未経験で採用予定だが、機械の知識や工場でものづくりの経験があればベター」なら、機械系の製造スタッフから営業に転身した経歴を持つ人をインタビュイーにする。また、「経験や知識は不要だが、とにかく稼ぎたいという思いをも人にきてほしい」というのなら、同じ志望動機で入社した未経験者をインタビュイーにする(そういえば、こうした人を狙う稼げる系の求人は全体に減ったような気がします。ワークライフバランスが重視が圧倒的に増えたのは時代の変化ですね)。人選がうまくいけば、記事が大ハズレすることはまずありません。広告の効果、採用コンテンツの仕上がりは十分に期待できます。
とはいえ、なかなか理想通りにはいかないことがあるのも十分に承知しています。未経験募集なら未経験の方を、経験者募集なら経験者の方をインタビューの対象としていただければ、まずは十分です。その他の場合も対処の仕方はいくつかあり、仮に中途入社者がいない場合でも先輩インタビューを成立させることはできますが、理想としてはターゲット近い人がいいということをぜひ覚えておいてください。
なお、憧れは、求職者に憧れを抱かせ、「あの人のようになりたい、あの人と一緒に仕事をしたい、あの人から学びたい」と思わせることを狙います。こちらも人選がとても大事で、エース人材を登場させることが欠かせません。ただし、どちらかと言えば新卒向けの内容です。社会経験がほとんどない若手を狙う時以外にはあまり用いりません。このほか、社内に業界の著名人やカリスマ的存在がいる場合も、求職者に憧れを抱かせることができます。
インタビュー記事の具体的な書き方
インタビュー記事は工夫の仕方はいくらでもあるのですが、ここではもっともシンプルでオーソドックスな書き方を一つご紹介したいと思います。結論から言うと、「時系列に沿って書く」です。過去→現在→未来の流れで書くのですね。求人広告のインタビュー記事のほとんどはこの流れになっているはずです。非常に書きやすいですし、読んでいるほうもすっと話に入っていけます。
既に伝えているようにインタビュー記事では、共感を狙います。ですので、インタビューでは、できる限り共感の材料(つまり、記事の材料)を引き出すようにします。先輩インタビューのポイントは人選だと伝えましたが、同じようにインタビューそのものもとても大事です(当たり前ですが)。
質問は、概ね以下のような内容が想定されます。どの項目を深掘って、どの項目を流すのかあるいは聞かないですますかは、設定したターゲットに合わせて決定します。インタビュイーの様子を見ながら判断することも欠かせません。特にインタビュイーとは初対面であることがほとんどなので慣れないうちはなかなか大変に感じるかもしれませんが、慣れてくればさじ加減もわかってきます。とはいえ、10年以上続けても、いまだにインタビューは始まるまでわからず、緊張することが多いです。ですので、緊張するのが当たり前くらいの感覚で話を聞くのがよいと思います。
・転職の理由(なぜ会社を辞めることにしたのか、転職に求めたこと)
・この会社に決めた理由(どの点に引かれたか)
・入社後の感想(入社前とのギャップはないか)
・入社後に受けた研修・指導(特に未経験の場合)
・実際の仕事内容
・仕事で大切にしていること
・仕事の面白さ、やりがい、厳しさ、難しいところ
・印象に残るエピソード
・職場の雰囲気
・一緒に働く仲間の印象
・就業環境、退社時刻は何時ごろか
・将来の目標、目指していること、成し遂げたいこと
・家族構成(必要に応じて)
・趣味、休日の過ごし方(必要に応じて) 等
インタビューが書く材料を集めたら、後は時系列に沿って話を組み立てていきます。話の強弱は「ターゲットの聞きたがっていること」を基準に決定します。話を聞いて自分自身が面白かったというところを強調してもかまいません。それもインタビュー記事を作る一つの面白さです。なお、この手法でインタビュー記事を書くと、ほとんど毎回「前職は~」から始まることになると思います。変化はあったほうがいいですが、それはそれで一旦良しとして、特に最初のうちは表現や言葉遣いよりも、内容で勝負しようくらいの気持ちで記事に向き合った方がいいでしょう。
以上が基本的なインタビュー記事の書き方です。何本か作っているうちに、もっと別の書き方をしたいと感じるようになるかもしれません。過去→現在→未来のオーソドックスな書き方でも工夫次第で変化はつけられますが、もう少しドラマティカルに書く方法もあるので、それについては別途またご紹介いたします。まずは基本の書き方を一通りぜひ試してみてください!
まとめ
・先輩インタビューの狙いは共感または憧れ
・中途の場合は共感が大事
・インタビューは人選がキーポイント
・尋ねることは、インタビュイーの過去・現在・未来
・もっともオーソドックスな記事の構成も過去・現在・未来