【コラム】求人広告はこう変わる。未来の中途向け求人を予測

紙媒体が中心だった中途採用向け求人広告は2000年代の初頭から徐々にネットに移行し、今や中途採用向けの求人情報の多くがネットを通じ伝えられるようになりました(以降、本稿で扱う求人広告は基本的に中途向け求人広告を指します)。「ネット型」と断りを入れるのが不自然なほど、求人広告と言えばネットで公開されるのが当たり前となっています。2000年代初頭は求人広告にとって大きな変革期だったと言えるでしょう。

一方で、その後の約20年間、求人広告はほとんど形を変えるとなく現在に至ります。細かく見れば、内容については各媒体で時に大きくリニューアルされながらより良質なものへと変貌を遂げたものの、相も変わらず会社名、職種名、PR文、仕事内容、応募資格、給与、勤務地などと項目を並べ、下部に応募フォームがあってと、求人広告然としています。「求人広告と言えばこういうものでしょ」という形がまったく変わっていないのです。

ご存じの通り、今は変化の時代です。これまで当たり前と考えられていたものが、大きく変化し、場合によっては姿を消しました。電話がスマホになり、衣類や家電を通販で買うようになり、今や自動車が自動運転化されようとしています。2000年に生まれた子どもはもはや22歳です。こうした大きな変化がある中で、求人広告だけが旧態依然のままで残るでしょうか。そんなことはまずないと考えられます。求人広告は必ず形をかえるはずです。では、どんな風に変わっていくのか。大胆に予想してみたいと思います。

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求人広告から応募ボタンがなくなる。

私は求人広告がネットへと移行する黎明期に業界に入りました。その分、こうなっているのが当たり前という思いが強すぎて、スコトーマ(盲点)になっていることが多々あるはずです。そこで、「絶対それはない」ことを中心に思案してみました。その結果、浮かんできたのが「応募ボタンがなくなる」です。

「応募ボタンがないと求人広告として意味がなくなるのではないか」という意見もあるでしょう。しかし、私としてもただ荒唐無稽なことを言っているのではありません。ちゃんとした根拠があります。世の中がマッチングの方向に向かっているということです。情報は一方的に流すことより双方向のやり取りが好まれ、互いのニーズがマッチすることが重要視されます。ネット広告などはこの最たる例と言えるでしょう、人材業界でも紹介や派遣の領域では「マッチング」は日常的に使われており、求人広告も応募を集め母集団を形成するというよりは、マッチングにますます重きを置くようになるのではないでしょうか。

その具体的な変化の表れとして、応募ボタンがなくなります。その代わり、「いいね」ボタンかそれに類似するものが実装され、企業あるいは求職者、いずれか一方がいいねをすると通知され、両者がいいねする、つまりマッチングが成立した時点で、やり取りができるようになります。応募に比べ、企業にアプローチするハードルが下がり、企業としてもより簡単に、それでいて一定の選別を行いながら求職者にアプローチできるようになります。

応募者のプロフィール欄が充実する。

求人広告の変化は、実は求職者(応募者)のプロフィールにも変化をもたらします。もしかしたら、求職者側の変化のほうが大きいかもしれません。なぜなら、応募からマッチングに変わることで、求職者のプロフィールもより広告的な要素が求められるようになると考えられるからです。

現状でも丁寧にプロフィールを作り込んでいる求職者は多くいると思います。ただ、どちらかというとフォーマットに従って書いただけで、それほど工夫はしていないでしょう。一方、求人広告がマッチングの方向に進むと、よりスピーディーに自身の魅力を伝えることが必要になってくるのではないでしょうか。自分をプロデュースする力、広告的に見せる能力がより重要になる可能性は十分にあります。

これは求人企業側にも言えることですが、ファーストビューの一覧画面がより重要視されるようになるでしょう。いいねを押してもらうためには、相手に気付いてもらって引き付けることが必要不可欠です。もしかしたらセキュリティ上の問題で、いいねを押してから、あるいはマッチング成立して、はじめてプロフィールの詳細が確認できるような仕組みになるかもしれません。プロフィールの詳細画面はそのままで、一覧画面が追加されることも考えられるわけです。いいねを押される求職者とそうでない求職者とで差が出ることも考えられるでしょう。

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求人サイトに登録料または使用料が発生する。

求職者が人材系のサービスを使う場合は基本的に無料です。求人サイトはもちろんのこと、紹介、派遣などでも使用料が発生しません。人材サービスのビジネスモデル上、求職者側に料金が発生するのはあり得ないと考えるのが妥当です。ただ、今後はサブスクリプションなどで追加料金が発生するでしょう。

求人サイトでは、上記の通り、応募ボタンがなくなりいいねボタンが生まれ、その結果、求職者側は一覧画面の作成が必要になります。この一覧画面の作成を代行するサービスが生まれるのです。また、AIが求職者に最適な業種・職種をレコメンドするサービスが生まれ、そのサービスの基本機能のみは無料で使えるものの、高度な機能については有料とさるケースも考えられます。高度な機能の具体例は、身につけるべきスキル、経験の提案です。例えば、ジョブチェンジしようと考えている求職者がいるとします。現状では転職は難しいものの、どのようなスキルを身につけ経験を積めば転職がかなうかAIがレコメンドする、というような機能です。レコメンドそのものは無料でするとしても、スキルを身につけるためのe-learningや受講証明書の発行は有料とするなども考えられるでしょう。これならば、求職者がサービス料を支払ったとしても、違和感はないはずです。

現状、求職者はお金を払わないことに慣れているので、使用料が取られるとなると、大きな抵抗感を持つはずです。ただ、どこかが使用料を取り始めれば、なし崩し的に使用料を取るのが当たり前となるでしょう。考えてみれば、一昔前は有料の求人誌がありました。今が単に一時的に完全無料になっているだけで、有料となるのはそれほど不思議ではないことかもしれません。

40代以上をターゲットにした求人サイトが生まれる。

これについては、ボツボツと始めるところが出ています。ただ、現状ではどちらかというとハイクラスの求人という意味が強いのですが、一般的な求人サイトと変わらず、未経験歓迎などといった求人広告が多く掲載されることになるでしょう。

今、人生100年時代と言われます。80歳まで現役などということがささやかれ始めており、そうすると40代の人材はあと40年も活躍できるわけです。これは20歳の若者が60歳まで働くのと同じ期間です。人口減少社会で労働人口が枯渇する中で、40年も働ける人材を放っておくのはいかにも惜しい。きっと社会の状況がそれを許さないでしょう。

変化の時代と言われている今、5年先にどんな仕事が生まれ、どんな仕事がなくなるかは未知数です。であれば、40歳からまったく新しい仕事に挑戦するのはそれほどおかしなことではないでしょうし、また、そうせざるを得ない状況にもなるでしょう。

端的に言えば、これから数年にうちに、40歳以上の人材に期待することが変わってきます。今は経験豊富なベテランとしての活躍が期待されていますが、良くも悪くも、20代30代と変わらない一労働力という見方が主流となると考えられます。

一定の年齢層以上は扱いにくいとされていますが、それはまだ社会が一定の若さを保っているからです。60代70代のスタッフから見れば40代は若手なので、扱いににくさはそれほど感じないでしょう。また、社会の中で40代のイメージも大きく変化しています。時代が下るにつれ、40代でも「若さ」を感じるようになり、昔のやり方に固執するという人も少なくなると予想されます。年功序列がなくなり、ある程度歳を取れば自動的に役職がつくということもなくなっており、固執するような経験を持っておらず、良い意味で柔軟性の高い人材が増えるはずです。既にその兆候は感じられるのではないでしょうか。従って、40歳以上の「労働力」に目を付け、新しい求人サイトが生まれてくることになるのです。

最後に、求人広告や求人サイトの変化というより、より大きな規模での変化として、人材サービス企業が転職・就職のみならず、キャリア支援、人材育成という面でより大きな役割を果たすことが考えられます。今でもそうしたサービスを提供している企業はありますが、より人材プールのプラットフォームとして活動を広げるのではないか。そんな予想もしています。キャリア支援、育成、福利厚生などを含めた60~80代の高齢者の適切な雇用を行える企業は、一部の大手に限られるでしょう。そこまで手が回らない状況に対し、人材サービス企業がサービスを提供するようになるはずです。、

まとめ

未来の求人広告を予想してみました。応募ボタンがいいねボタンにとって代われる、求人広告がより双方向のコミュニケーション取れるものになる、使用料が発生する、40歳以上をターゲットにした求人サイトが生まれるなど、現状ではあり得ないと言えるような変化を思考してみました。ただ、こうして文章にしてみると、どれもまだまだあり得ないと言えるほどでもないような気がします。人材業界に長年携わっているため、どうしても発想が自由になりきれないのかもしれません。こうしたこともあり得るのではないという意見があれば、ぜひお気軽にお寄せください。

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