先輩インタビューをドラマティカルに見せるコツ

前回、先輩インタビューのオーソドックスな書き方を解説しました。オーソドックスな書き方を続けてももちろん、問題はありません。一人ひとり言うことは違いますので、書き方は同じでも内容は必ず違うからです。ただ、たまには違った書き方をしてみたいと思うこともあるでしょう。特に「いい話を聞いた」という手応えがあった時は、よけいにそう思うかもしれません。書き方はいろいろあるのですが、その中で、少しドラマティカルというか、抒情的に表す方法があります。今回はそれをご紹介します。

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作文の書き方、いわゆる「起承転結」を応用してみる。

インタビュイーの話により物語性を持たせ、少し感動のある内容に仕上げたいという場合は、作文の書き方、いわゆる「起承転結」を応用するのが有効です。作文、起承転結などと言うと拒否反応が出そうですが、ご安心ください、ちゃんと書けるように説明します(そもそも作文や起承転結の書き方をちゃんと習ったという人は少ないのではないでしょうか)。

また、起承転結というと少し難しく感じるかもしれないので、「過去大過去未来」法と言ったほうがいいかもしれません。オーソドックスな書き方は、過去→現在→未来と時系列に沿って話を構成すると説明しました。「過去大過去未来」法では、文字通り、過去→大過去→未来の順で話を構成します。この場合、大過去とは過去よりさらに過去を指します。過去から過去にさかのぼり、最終的に未来に帰着させます。まずこのことを覚えておいてください。少し順番を変えるだけで、文章にとても味わいが出てきます。

いきなり「いい場面」から始める。

インタビューをしていると、ポイントとなる話が出てきます。それは、「自分の成長を実感した瞬間」かもしれませんし、「仕事の本当の面白さを感じた瞬間」かもしれません。あるいは、「自分を変えた先輩の一言」ということもあるでしょう。「あれがあったから今の私がある」みたいな話が好ましいです。そうしたポイントとなる話(場面)を冒頭に持ってきます。同時にそのポイントとなる場面が、自分(インタビュイー)にとってどんな影響を与えたかなど、簡単に感想などを添えておくといいでしょう。冒頭はダラダラ書き過ぎないのがコツです。短く簡潔に語ります。起承転結で言うなら、ここが「起」です。

続いて、ポイントとなる場面を詳しく状況説明します。ここは「承」に当たりますが、必要に応じてカットしてもかまいません。冒頭の部分で話が十分に伝わるなら、それ以上、細かな描写は不要です。

その後、背景やなぜそのようなことに至ったかを解説します。「あの時、私はこうだった。そしてこんなことをした。するとこんなことが起きてポイントとはなる話に行き着いた」というような話の流れです。ポイントの地点からさらに過去(大過去)にさかのぼって話を進め、最終的にはポイントの地点に戻ってきます。ここは「転」の部分に当たります。「転」というと話をひっくり返すと捉えがちですが、むしろ展開する「展」と考えたほうが適切だと思います。

具体的な話を盛り込みますので、必然的にボリュームは多めになります。淡々とした語り口調にするよりも、少し熱っぽくしたほうがいいでしょう。論理性などは多少、無視しても大丈夫です。順序立てて話をするよりも、インタビュイーの心の変化に焦点を当てます。誰それさんに「これこれこうだ」と言われたと、お客様や上司、先輩、同僚、後輩、同業他社などとの会話文を挿入するとより物語性が強化されます。ただし、無理に入れる必要はありません。

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最後に決意を語る

最後は未来を語ります。軽く現在の自分にも触れておくほうがいいでしょう。こんな具合です。「ポイントとなる話があったから、今の私はこうである。そして、将来はこうしていきたい」。最後は決意を述べると話が引き締まり、一連の物語が、きれいに終結した感じが醸し出せるはずです。もちろん、この部分は「結」です。

いかがでしょうか。起承転結あるいは過去大過去未来で書くと、インタビューが物語性のあるものとなり、ドラマティカルになるのがわかると思います。

インタビュー記事を読み直す際のチェックポイントとして便利なのが「カンカラコモデケア」です。カンカラコモデケアとはすなわち、

カン = 感動
カラ = カラフル
コ = 今日性
モ = 物語性
デ = データ
ケ = 決意
ア = 明るさ

です。カンカラコモデケアは毎日新聞の記者、山崎宗次さんが提唱していた作文法です。カンカラコモデケアの要素がそろっている作文が良作ということです。仕上がったインタビュー記事を読んでみて、今一つ心に響かないと感じた時は、カンカラコモデケを確認してはいかがでしょうか。多くの場合、何か欠けている要素があるはずです。

※カンカラコモデケについては別途、どこかで丁寧に解説したいと考えています。

ドラマティカルなインタビュー記事を書く時の注意点

インタビューは何が何でもドラマティカルに仕上げればいいかというと、実はそうでもありません。まずこの書き方は、ある程度の文字数が必要になります。800字くらいないと中途半端に終わったり、熱量が伝わらなかったりします。

文章のテイストは、どちらかというと新卒寄りになります。仕事をする、社会に出る、ということに対し、未知の部分が多い新卒には、抒情的な書き方がちょうどいいということがあります。一方、中途に関しては、あまりやり過ぎると暑苦しく感じてしまいますので、ここぞという時以外はあまり使わないほうがいいでしょう。求職者(ターゲット)が転職に何を求めているかを良く考えた上で、何をどう書くかを決める。ターゲットが本当にドラマティカルな話を聞きたがっているかを考える。この点は、求人広告の作り方と同じです。

また、中途は「感動的な話」に対する免疫があります。つまり、仕事や社会に対し、一定の知識があり、ちょっとやそっとの話では心は揺さぶられません。きっと、どこかで聞いた話だなと思うでしょう。この点は、書き方でどうにかなる問題ではありません。どこまで踏み込んだインタビューができるかが鍵となります。書いてはみたもののどうもうまくいかないという場合は、取材(情報)不足、冷静になって考えてみると大した話ではなかった、ということも少なくありません。

最後に、起承転結は論理的な書き方とは言えず、論理が少しくらい破綻していても感情で押し切ってしまうくらいがちょうどいい、という側面があります。少々特殊な分、慣れが必要になるところもあります。作文は書ける奴は書けるし、書けない奴はかけない、なんてことも言われてきました。ただ、自分で言うのもなんですが、これまであまり説明されてこなかった起承転結の書き方を、実践で使えるくらいに丁寧に説明したつもりです。書き方のバリエーションが増えると、インタビューの思いをまた別の形で伝えられるようになります。それはとても楽しいことではないでしょうか。楽しみながら書くようにしていただければ幸いです。

なお、上記で説明した起承転結の流れは、インタビューに限らず、通常の作文でも十分に通じます。と言いますか、作文の書き方をインタビューに応用したのでした。入社、卒業、進学の季節に、作文で困っている人にぜひ教えてあげてほしいと思います。きっと役に立つはずです。また、こうした文章の書き方はまた別の機会でお伝えしていく予定です。

(まとめ)
・インタビューをドラマティカルに書くには起承転結を応用する。
・話の流れは、過去→大過去→未来。
・冒頭が肝心。ポイントとなる場面を、短く簡潔に書く。
・最後は決意で閉めると引き締まる。
・話が暑苦しくなりがちなので、どちらかというと新卒向き。
・出来の鍵を握るのは取材。どこまで踏み込めるか。

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