【求人広告の作り方10】中途採用向け打ち出し(訴求点)の見つけ方
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求人広告(採用コンテンツ)、超作成方法⑩

以前、言及したことがありますが、求人の打ち出し(訴求点)はいくつかパターンが決まっています。転職理由がいくつかに集約されるのと似ていると言えるでしょう。コピーライターはそのパターンを念頭に置きながら、最終的な打ち出し、原稿・コンテンツのテーマを決めます。今回はどんな打ち出しのパターンがあるか、具体的に見ていきます。

※本ページは「求人広告(採用コンテンツ)、超作成方法」でお送りしているシリーズの第10回です。

そもそも論ですが、人はなぜ働き、転職するのでしょうか。

人はなぜ働き、転職するのか。実は、これを考えれば、打ち出すポイントはだいたい見えてきます。すなわち、「食うため」「将来のため」「家族のため」「スキルを磨きたいため」「もっとやりがいある仕事をするため」「新しい価値を生み出すため」「社会に貢献するため」「自己実現のため」などです。これらはそのまま打ち出しのパターンになります。

合わせて、転職の場合はマイナス要因をプラスに転化しようとする気持ちが働いていることも十分に考慮しなければなりません。つまり、「転勤させられそう」「給与が上がらない」「ステップアップできない」「いい上司がいない」「会社がつぶれそう」「仕事がつまらない」「自分の仕事に社会貢献がない(むしろマイナスの影響を与えている)」などを解消しようとして、転職に踏み切ろうとしているのですね。ターゲット設定の段階で、なぜ転職するのかを深く考えたはずです。その理由と打ち出しのパターンを照らし合わせながら、最終的なテーマ(コンセプト)を決めていくのです。

ただ、ここまでの話は、転職(中途採用)というものを単純化しすぎているところがあると思います。もう少し、と言いますかさらに「人」に迫らないと、良い中途向け求人広告は作れないでしょう。

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下世話だけど、本音の話。

新卒採用の求人広告は、どちらかというと、会社紹介や仕事紹介が中心になると思います。先輩インタビューはキラキラしており、仕事や会社の良い側面を見せる、言ってしまえば「綺麗事」の面がある点も否めません。学生が相手ですのである程度、夢を見せることも必要で、美しい部分だけを見せるのはある意味で当たり前のことでしょう。しかし、中途は違います。一度、社会の現実を目にし、会社とはこういうものだという自分なりの理解もあります。日本ではまだまだ浸透しきっていない転職まで考えているのです。綺麗事は通用しません。もっと本音の泥臭い部分に迫る必要があります。本音に迫るからこそ、差別化が図れ、中小企業が名だたる大企業に対抗できる。規模や知名度のない企業が採用を実現するには、ターゲットセグメントを行いターゲットの本音に迫った打ち出し、広告設計・コンセプトメイキングをするしかないのです。

この意味で、中途採用のコンテンツを手がけることは、人間を知ることに近く、人の感情にフォーカスすることで、鋭い訴求が可能になります。もし感情を考慮しないのだとしたら、人材の要件と給与、勤務地などデータのみを記載した、ただの求人票になるでしょう。もちろん、人材の要件を正確に表し、給与などを明示することは大切です。そこにも一定のテクニックはありますが、求人広告をはじめとする採用コンテンツはそれ以上が求められるとご理解ください。

さて、「本音」の話が出たついでに、多くの人が仕事に求める本音をご紹介しましょう。それは、「楽して稼ぎたい」ということです。反対意見もあるでしょうが、休みが多く残業はないが、給与は高い方がいい、と考える人は多くいるでしょう。この考えがベースにあるので、中途採用では「残業ゼロ・少な目・ほぼナシ・月20時間未満」の文言が飛び交うのです(新卒では残業が多かろうが少なかろうがあまり触れられることはありませんね)。

また、仕事に求めるものも人それぞれです。「単純作業をルーチンワーク的に淡々とこなしたい」という本音を持つ人もいます。「極力、頭を使いたくない」「できる限り、コミュニケーションは避けたい」という本音もあるはずです。中途はこの本音を無視しません。新卒だと敬遠されそうですが、むしろ真正面から捉え、打ち出しにすることもしばしばです。このため、非常にバラエティに富んだコンテンツができるのです。

ついでながら、中途採用にまつわる興味深い現象を一つご紹介します。中途採用では(おそらく新卒でも)、社団法人、財団法人、NPO法人など非利潤追求型、社会貢献型の団体は人気が高いです。どう考えても安定性はなく給与も安いNPO法人でも、かなりの応募が集まります。なぜでしょうか。みんな社会貢献がしたいのでしょうか。違うでしょう。その気持ちはまったくないとは言いませんが、本音のところは「競争したくない」だと考えます。日本人全体の傾向として競争は苦手なのでしょうし、また、誤った教育の賜物として、お金を稼ぐことへの一定の抵抗もあるのではないでしょうか。分析が正しいかどうかはさておき、人の本音と向き合うことで、より深いコンテンツが作成できるのです。

今さらだけど、欲求の段階を知ろう。

求人広告を制作する上で便利なツール、考えた方に一つに「マズロー路の五段階欲求」があります。やや使い古されていますが、有効なところも多いので、ご紹介します。まずは下記の表をご覧ください。

欲求は1の生理的欲求から5の自己実現の欲求に段階的に上がっていきます。最近では、自己実現の上に「自己超越」という6段階目があると言われています。自己超越は自分や他者という概念がなくなった状態とでも言えるでしょうか。悟っている状態が近いかもしれません。が、マズローの説に関する深堀は、ここではあまり重要ではありません。大切なのは、欲求には段階があり、かつ満たされた欲求にはもう興味をなくすことです。つまり、生理的欲求を満たされている人は、次の安全と安定の欲求を目指します。求人広告を制作する上では、ターゲットがどの欲求の段階にいるか考えることが必要不可欠です。その欲求を満たせますよ、というのが打ち出しにするのが、基本的なコンセプトや戦略となります。
※マズローの五段階欲求説は真偽性について否定的な意見もあります。ただ、感覚的に理解しやすい面もあると考え、取り上げました。

欲求の段階を見てみると、仕事のやりがいを求めるのは、3より上の段階だとわかります。転職者の本音の部分につながってきますが、自分がやりがいを求めているからと言って、誰しもが同じようにやりがいを求めているのではないと、この事実を理解することは、中途採用では非常に重要になってきます。また、以前は若手は低次の欲求を満たそうとし、ベテランが高次の欲求を目指すことが一般的と言われていました。しかし、近年は社会環境も変化し、物質的には満たされていることや、インターネットやSNSの発展で組織に所属しなくても社会への影響力を発揮して称賛を得られる状況が増えてきました。このため、若手でも自己実現を目指す人は多くおり、反対になかなか仕事を見つけられないなどの事情でシニア世代が生理的欲求や安定と安全の欲求を求めることも増えています。これからのことを理解し、ターゲットや打ち出しを考慮する必要があるでしょう。

最後に、打ち出しにはパターンがあると言いました。人が魅力を感じるポイントは限られているので、当然と言えば当然ことです。ただし、あまりにパターン化し過ぎると、同じようなコンテンツばかりになってします。ある程度は仕方のないことですが、あまりに同じパターンが続くようでしたら、再考をオススメします。その際は、ターゲットに立ち返ることが有効です。「何を」だけ見ていても新しいアイデアは出てこないものですので。

まとめ

・働くことや仕事、会社に求めることはそのまま打ち出しになる。
・中途採用の場合は「綺麗事」だけを言っても響かない。
・求職者の「本音」を深く考えることが重要。
・(日本)人への理解が、鋭い訴求につながる。
・マズローの5段階欲求も参考になる。

次回第11回は⇒こちら

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