【コラム】求職者の建前と本音。転職の条件、本当に求めること

中途向け求人広告の大きな特徴として、求職者の本音に迫ることが挙げられます。表層的な志望動機や転職理由から一歩踏み込み、本当に求めていること、すなわち本音はどこにあるのかを追求します。このことは、本サイトを通じて何度か言及してきました。本記事では、もう少し転職者、つまり社会人の本音及び建前について、考えていきたいと思います。

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どこまで本音に迫れるか。

まずはこの本音について定義づけをしたいと思います。ここで言う本音とは、真の転職理由とほぼ同義だと捉えることとします。転職理由について、表面的にはどのようなことを言っているかはともかくとして、その裏側には隠された別の理由(本音)があるという考え方です。これは、社会人に限らず、学生にも当てはまる部分はあるでしょう。ただ、社会人の場合は本音の幅が広がります。社会人のほうが、年齢や置かれている立場が学生より広範囲に及びますので、当然と言えば当然です。

その上で、ここではもう少しこの本音について迫ります。例えば、表向きは仕事のやりがいを求めて転職すると言っているが、実はもっと休みが欲しがっており、これこそ本音で真の転職理由であると、そうした捉え方をするとします。これはこれで間違いではないのですが、真の転職理由への迫り方が少し甘いような気がします。この場合、なぜ休みがほしいのかについてはほとんど考えが及んでいないからです。

一口に休みが欲しいといっても、その裏側にある理由は多様です。単純に体を休めたいというよりは、もしかしたら、資格試験のための勉強がしたい、のかもしれません。すると、いかがでしょうか。見えてくる景色がかなり違ってくるのではないでしょうか。「うちは休みや残業時間は一般的だが、待機時間が長くその時間に自学自習を推奨している。加えて、定期的に資格試験の勉強会を開いており、資格学校に通う場合は時間を融通している。資格取得者は多く輩出している」ということがあれば、それはそのまま打ち出し(訴求点)になります。かつ資格取得後のキャリアアップまで見せることができれば、ターゲットへの大きな魅力となるでしょう。

これは結局どういうことなのかというと、真の転職理由を深く考えることで、ターゲットにすべき人材が見つかり、その人材に訴求すべきポイントが発見できたということです。上記はやや単純化していますが、こうした見方をしていると、自社の新たな打ち出しのポイント(訴求点、魅力)の発見につながることは少なくありません。

建前の志望理由を言えるようにしておく。

一方で、真の転職理由がもっと泥臭く、あまり表立って口に出されない本音も当然にあります。例えば、前の上司とぶつかった、とにかく疲れたし近所でのんびり働きたい、などでしょうか。こうした本音を訴求点とどう結びつかせ、どのように表現するかは、十分な思料が必要とされるところです。

また、「本音はわかるけど、もっとうちの事業に興味を持ってほしい」との思いもあるでしょう。実際、こうした要望は少なからずあります。募集側からすると当然の要望とも言えます。同時に、求職者の側から見ても、事業に興味を持ち応募に応じるのは非常にまっとうで、実際に応募した後、面接などの場で自身の志望動機などが作りやすくなります。

求人広告の作成では、この点に着目します。つまり、求職者の側が口にしやすい志望動機をちゃんと用意しておくのです。求人広告を読むことで、求人企業が言ってほしい志望動機をターゲットが言えるように仕掛けます。では、真の志望動機はどうするのかというと、それを志望動機として口にするかどうかともかく、ターゲットが希望する環境があるとわかるように示しておきます。この時、大切になるのはバランスです。本音と建て前、どちらを強調するかは、その時の状況によって変化させます。この匙加減は経験の要するところです。

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中途向け求人広告はなぜ本音に着目するのか。

転職と就職は大きく異なります。就職はほとんど必然的にしなければいけないものなのに対し、就職は必ずしもする必要はなく、さらにはできれば避けたいという気持ちもあるはずです。それにも関わらず、転職を決意しました。また、学生から社会人になり、仕事を経験することで、価値観が変わることも少なからずあるでしょう。社会や会社、仕事を見る目も変わってきます。

こうした事情を考慮すると、少なくとも学生に向けたメッセージとは異なるものにしようと思えてくるはずです(状況によっては同じになることも場合もあります)。就職活動の大変さは広く認知されるようになっていますが、転職の場合のほうがより状況がひっ迫していることが少なくありません。だからこそ、求職者の本音に迫ったほうが、より効果が得られやすいのです。

ただし、誤解なく。状況がひっ迫しているからといって、悲壮感の漂う求人広告が求められるということではありません。表現のアプローチはさまざまです。本音に迫りながら楽しくすることも、シニカルにすることも、まじめにすることもできます。実際、中途向け求人広告はバラエティに富んでいます。そこが中途向け求人広告の面白いところです。

また、学生にももちろん、本音と建前はあります。ただし、学生は、仕事や社会に対し、あまり経験や知識を持っていません。知識はあるかもしれませんが、実体験が伴わないことがほとんどです。そうした中で生まれる「本音」をどこまで丁寧に拾う必要があるか。新卒向け求人広告はあまり拾わない傾向にありますが、今のところ、正しい選択の一つではあるようには感じています。

中途向け求人広告を作成する際の一つのコツとして、本音と建前をその時々の状況に応じてバランスよく配置することが挙げられます。また、転職者の本音に迫ることで、これまで自社の気づかなかった魅力が発見されることもあります。この点もぜひ覚えておいていただければと思います。

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