中途向け求人広告で、有効な手法

求人広告は、会社や仕事の良さや面白さを強調し、ターゲットを訴求するのが基本というか、王道の手法です。このことについて、疑問をさしはさむ余地はないと思います。今回はもう一つ、非常に有力で効果のある手法をご紹介いたします。

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「自分がターゲットだと気づいてもらう」

結論から言ってしまうと、会社や仕事の良さを見せる以外の、求人広告のもう一つの手法とは、「自分がターゲットだと気づいてもらう」というものです。具体的には「●●という能力をお持ちのあなたへ」みたいな感じで、ターゲットが持つ経験や能力に焦点を当て、「あなたが持っている能力は当社で活かせます」と訴えかけるのです。

言われてみれば、どこかで見たことがあるのではないでしょうか。試しにdodaやリクナビを見てみてください。10件20件と見ていくと、1件くらいは見つかると思います。この「自分がターゲットだと気づいてもらう」手法は、意識的に使っているコピーライターもいますが、何となく結果としてそうなったという場合も少なからずあります。

この手法は、中途採用で非常に有力です。なぜなら、中途採用ではある特定の経験や能力を求める場合が多い反面、求職者は自分の経験や能力が他の職種や業界で活かせるとなかなか気づきにくいからです。気づきにくいというよりはほとんどわからない。わからないからこそ、人材紹介(転職エージェント)という分野が成り立つのでした。エージェントは「あなたの能力は、この業界のこの会社のこの仕事で活かせますよ」と教えてくれるのでしたね。それを求人広告でやってしまうのです。

転職のポータルサイトはザーと流し読みされることが多い媒体です。流し読みしている間に、自分の経験が活かせると書いてあれば、「おっ」と思うでしょう。また、転職のポータルサイトの多くは職種検索できるようになっています。例えば、営業の経験者が人事の仕事をしたいと思い、人事職を探しているところで「営業の経験をお持ちのあなた、次は人事として活躍しませんか」なんてキャッチコピーを見たら、目にとまるはずです。「自分がターゲットだと気づいてもらう」手法は、ポータルサイトの作りとも合致しているのです。

注意しないと、当たり前のことを言っているだけになる

ただし、広告制作には注意が必要です。安易に作ってしまうと、「当たり前のことを言っているだけ」になってしまうからです。先ほどの例で言うと、営業→人事の間には一定の距離感があり、そのギャップから広告が成立していました。これが営業→営業の転職で、「営業の経験をお持ちの方へ。ぜひ当社を新たな舞台に」と訴求されたところで、当たり前すぎて何の引きにもなりません。

また、少し複雑な話にはなるのですが、営業と人事を入れ替え、「人事の経験をお持ちのあなた、次は営業として活躍しませんか」とすると、成立が難しくなります。人事→営業は確かにギャップはありますが、人事と営業を比較した場合、人事のほうがより人気職で、営業への転職への魅力は薄いと言わざるを得ません(人気職というより希少性が高い職種と言ったほうがより正確ですが)。人気のある職種により人気のない職種からジョブチェンジできるから魅力であるのであって、その逆は魅力には映りにくいということです(もちろん、敢えて狙ってみることはできなくはないですが)。

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ストレートな言葉で訴求する

ここで「自分がターゲットだと気づいてもらう」手法の、一つ便利な側面をご紹介します。それは、「求める能力」は必ずしも仕事を通じ培った能力あるいは経験でなくてもいいということです。具体的には、例えば、「何時間でもゲームを楽しめるあなたへ」というキャッチコピーで、ゲーム好きなターゲットにした広告が成立します。また、人の性質の面に着目することも可能です。具体的には「求む、言われたことを言われた通りにできる方」という広告もありです。

ただし、使用上の注意として、この経験・能力・性質を求めているのだと、はっきりわかるように伝える必要があります。例えば、テンション高めの人を募集しようと「すぐにテンション上がっちゃいます」みたいなキャッチコピーを作ってしまうと、途端によくわからなくなってしまわないでしょうか。私が会社勤めをしていたころ、「すぐにテンション上がっちゃいます」と似たようなキャッチコピーを実際の求人広告に掲載されていたことがあり、それを見た後輩から「これはいったい、何を言いたいと思いますか」と質問されたことがあります。

求人広告というのは(他の分野も同じですが)玉石混交で、わけのわからないものもあります。これもそうしたものの一つだろうと思ったのですが、なんとなく気になるところがあり、何度も広告を読み返しているうちに、「テンション高めの人をターゲットにしているが、言葉が滑っている」と気づきました。

おそらく、もっとストレートに「求む、テンションをすぐに上げられる方」としたほうが良かったと思います。そのほうが伝わるスピードは速いはずですが、「求む、~方」なんてありきたりでダサい、とか思ったのでしょう。そうして言葉に凝っているうちに、よくわからないキャッチコピーになったのだと推測できます。キャチコピーは伝わらないと意味がないので、この手法を用いる時は、ストレートに言い切ることをおススメします。この手法の肝はギャップにあるからで、そのギャップをスピーディに伝える必要があるからです

一般的に評価されない経験・能力に光を当てる

従って、実はこの広告にはもう一つ、改善の余地があります。それは、テンションをすぐに上げられる人をターゲットにしている点です。既に述べたように、「自分がターゲットだと気づいてもらう」手法にはギャップが必要です。つまり、前提として、通常は評価しない能力や経験を買うと言っているから成り立っている側面があるのです。そこに驚きがあり、一種のニュース性が生じます。「私のこんな能力がそんな仕事で活きるんだ」と気づかせることが大事であり、そうなればしめたものです。

テンションの上下をコントロールする能力は、多くの企業、職種が求めているのではないでしょうか。私が先ほど例として挙げた「作った言われたことを言われた通りにできる」との差を感じていただければと思います。後者も多くの企業、職種で有効な能力の一つとは思われますが、これが必要だと大々的に言われることは少ないので、広告として成り立ちます。

「自分がターゲットだと気づいてもらう」手法は非常に有効ですし、募集職種と求める能力にギャップがあればあるほど、それそのものが一つのニュースであり、効果は絶大です。求職者に驚きと新鮮さを感じてもらうこともできるでしょう。ぜひ活用してみてください。

こちらの記事も参考にしていただければ幸いです。特に後半部分に今回の記事で触れたことが書かれています。

(まとめ)
・求人広告には「自分がターゲットだと気づいてもらう」という手法がある。
・特定の経験や能力を求める場合が多い中途採用でとても有力。
・求める能力や経験と、募集職種のギャップを意識する。
・当たり前のことを言っていないか注意する。
・通常は評価されづらい経験・能力に光を当てるのが肝。

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