中途採用と新卒採用は別物。
具体的な制作方法に入る前に、中途採用と新卒採用の違いをお伝えしたいと思います。まずはっきりさせておきたいのが、両者はっきりと別物である、ということです。新卒採用のノリで中途採用を捉えてしまうと、多くの場合、失敗します。逆もまたしかりで、両者は別物であることを理解し、求人広告を作成するなど、求人情報を発信する時は、異なるスタンスで行わなければならないのです。当然、求められるノウハウも違ってきます。新卒採用の実績は、中途採用では通用しないと考えたほうがいいでしょう。では、どこがどう違うのか、具体的にみていきましょう。
違いその1:中途採用は職種別で行われる。
新卒は総合職採用で、広くジェネラリストを求めているのに対し、中途は職種別採用で、スペシャリストを求めます。営業、人事、SE、施工管理、ドライバーなどと、職種ごとの採用を実施し、応募者には経験やスキルを問います。もちろん、未経験者を歓迎することも多く、必ずしもスペシャリストを求めるとは限りませんが、それでも、職種別に採用が行われることに変わりありません。
これは、制作側からすると大きな違いで、採用コンテンツの作りが大きく変わってきます。具体的には、中途採用では、コンテンツが仕事内容に割かれる部分が多くなるということです。一方、新卒では、高度に専門性が求められる研究職などを除けば、仕事内容はあまり詳細に書かれません。どちらかと言えば、会社の紹介に焦点が置かれます。
なお、たまに総合職採用をうたっている中途の求人も見かけますが、全体としてはごく一部です。また、総合職と言いながら、実際には職種別の採用であることも少なくありません。特に求人のポータルサイトサイト(doda、クリエイト転職、マイナビ転職など)でこうしたことがよくあります。これには、媒体側の事情が大きく絡んでおり、媒体に出稿する場合は、一原稿一職種が原則となっています。しかし、一原稿で二職種以上を載せてほしい強く要望されることもあり、複数職種に見えない回避策として総合職を便利に使っているのです。経理総務など、会社によっては職種を切り離せないこともあるでしょう。その場合は仕方ないとして、「効果」という観点からは、基本的に一原稿一職種の原則に則ったほうがいいと考えます。
違いその2:採用ターゲットが社会人
「ターゲット」については改めて詳述しますので、ここでは、中途採用の人材(採用候補者)について概要を説明します。新卒採用はその名の通り学校の新卒者を対象とした採用で、一方の中途採用は社会人経験者を主な対象とします。なんだ、当たり前のことじゃないか……と感じたかもしれませんが、実はこれは非常に重大な違いなのです。
社会人は一度はどこかしらの会社に入り、仕事というものを経験しています。つまり、自分の目で社会の現実を見ているのです。新卒が仕事や会社に対し夢見がちなのに対し、社会人は社会に対し知見があります。スレているという言い方ができるかもしれません。この事実が、採用コンテンツに与える影響は決して小さくはないのです。社会人に対し、新卒向けのように夢や希望ばかり語っても通用しません。夢や希望を語ってもいいのですが、地に足のついた内容でないと、嘘くさい、言ってるだけ、と判断されます。また、給与・福利厚生・待遇・就業環境など、新卒ではどちからかというとあまり触れないところも、シビアに見られるのが特徴です。
さらに、中途入社のターゲットは、新卒に比べ圧倒的に幅が広がります。新卒者は主に10代20代ないのに対し、社会人は10~60代、場合によってはさらにその上を含むことがあります。職歴やライフステージもさまざまなので、中途向け採用コンテンツを手がける時は、ターゲットの設定を詳細に行う必要があるのです。この点、文系か理系か、安定志向かベンチャー志向かなどでざっくりとターゲットを分類する新卒とは大きく異なってきます。
違いその3:転職は就職ほどメジャーではない
新卒での入社がほとんど必然であるのに対し、中途は必ずしも必然ではありません。必然でないどころか、できれば、避けたいとすら思われているでしょう。<転職はしたくないからこそ、会社選びを慎重に行うのです。転職の際も、これ以上転職を重ねたくはないとの理由で、やはり会社選びは慎重に行われます。
「転職」という言葉は、今や当たり前のように使われるようになりましたが、少なくとも日本人にとってはまだまだ後ろめたいものであるようです。このごろ、退職のことを卒業と表現する傾向も見受けられますが、どこかに後ろめたい気持ちがあり、それを卒業という前向きな言葉で覆い隠しているようにも感じられます。
総務省の統計によれば、転職者数は1990年以降、250~350万人を推移しています。転職率は4~5.5%で、転職者は20人に1人の計算です。ただし、年齢別に見れば若手ほど転職率は高く、2000年以降、15~24歳は10%超、25~34歳は5%超です。また、近年は全体でも転職率は微増していますので、今後は今よりも転職が一般化する可能性はあります。
出典:内閣府
ただし、やはり転職はできれば避けたいものである、ということを理解しながら、採用コンテンツと向かい合わなければならいでしょう。採用候補者に寄り添う姿勢が求められます。制作上のテクニックの話をするなら、うまく転職理由を作り、転職への心理的なハードルを取り除きながら、動機づけを行うことが重要になってきます。
まとめ
・総合職一括採用の新卒と、職種別採用の中途。
・中途採用のターゲットは社会を知っている社会人。
・かつさまざまなバックグラウンドを持つ人材がターゲットになり得る。
・転職に後ろめたさを感じる人が、まだまだ多いのが実情。