求人広告を目立たせるには、キャッチコピーの果たす役割は非常に大きなものがあります。言葉一つで文字通り求職者の心をキャッチ出来たらいいのに、と思うものの、見た目ほど簡単には作れないのがキャッチコピーです。ただ、実はほとんど誰にでも使えるキャッチコピー作成の技術は存在します。しかも、欲しい人材への訴求がしっかりとできているとしたら?これを使わない手はないでしょう。今回はシンプルで、それでいて非常にパワフルなキャッチコピーの作成方法をご紹介いたします。
有名人の名を借りる(ただし、使い方は要注意)
求人広告の作成には、設計やコンセプトメイキングが大切で、いきなり表現を考えるのはあまり推奨しません、とは言っていますが、今回ご紹介する手法は、キャッチコピーを見れば全体のコンセプトが伝わり、かつ全体的にブレなく広告が作成できるという優れ物です。早速、キャッチコピーの具体的な形をお見せしましょう。
「なんだそれは、何の工夫もインパクトもないじゃないか」と感じたかもしれませんが、ちょっとお待ちください。具体的な名前を入れ込めば、シンプルかつパワフルなのが伝わるはずです。
いかがでしょうか。これで、どんな人材を求め、どんな役割を果たしてほしいか伝わると思います。さらに言えば、求人企業に先進性があるか、あるいは革新を求めていることまでもが表現できています。
「求む」がダサいと感じたなら、「どこかにスティーブ・ジョブズはいませんか」や「スティーブ・ジョブズはどこにいる」くらいにしておけばそれなりに見えるはずですし、他にも工夫の方法はあるでしょう。肝はスティーブ・ジョブズという象徴的な人物を明記し、求める人物像、役割、企業風土を伝えていることにあります。つまり、適切な有名人さえ見つけてしまえば、細かな表現は放っておいても問題がないのです。
さらに、この手法の便利なところは、人物名を変えて、いくつもキャッチコピーができることです。また、業界にとっては有名だが一般的にはそれほどでも、という人物を敢えて選ぶことで、ターゲットのセグメントもできてしまいます。少々やぼったくなりますが、必要に応じて有名人の前に「第二の」「令和の」などの修飾語をつけることも可能です。
一方、欠点としては、フリーライドに当たる可能性があることです。フリーライドは他の名声やブランドを無許可に借用するというもので、広告制作で有名人の名前を使う時は、本人や関係者の許可を得なければなりません。「求む、有名人」は作るのは簡単ですが、手続きが難しいので、ここぞという場面で使うのがいいでしょう。
なお、フリーライドの回避策として、「求む、スティーブ」などとぼかす手はありますが、少しグレーゾーンなところがあります。無難なのは、歴史上の人物を用いることです。ただし、あまりに有名すぎると陳腐になってしまいます。反対にマイナー過ぎると意味がわからなくなりますが、ターゲットセグメントは図れるかもしれません。いかに適切な人物を見つけられるかがカギとなります。
際立った事実を伝える。
有名人の知名度を借りるのは、簡単な反面、フリーライドに当たる可能性もあり、その点は注意が必要でした。結局使えないじゃないか、と思ったかもしれませんが、ご安心ください。これからご紹介する「際立った事実を伝える」手法は、そういった懸念はありません。自社に「際立った事実」があるかどうか、あるいは見つけられるかどうかがすべてです。では、具体的なキャッチコピー例を見てみましょう。
2.ウチの営業リーダー(38歳)、前職はバリバリのニート(歴15年)です。
3.設立50年でもっとも痛恨の出来事は、退職者を一人出してしまったことです。
4.設立56年目で、とうとう前年比150%を割りました。
5.1日10回、部品を段ボールに詰めるだけ。
6.国内では、まだ6社しか実現していません。
いかがでしょうか。人目を引くインパクトは十分にあるはずです。このキャッチコピーの最大の特徴は「事実」であることです。極端に言えば、事実をポンと出しているだけ。上記はキャッチコピーとしての体裁を整えるために言葉を少し工夫していますが、そうした工夫を必ずしも必要としません。強い事実が見つかれば、キャッチコピーは9割がた出来たも同然です。
また、際立った事実を客観的に伝えるのは、数値が重要な役割を果たしているのに気づくと思います。もちろん、数値を出さなくても伝えようはありますが、やはりデータは強力です。取材時は数値をしっかりとヒアリングするようにしてください。
なお、上記のキャッチコピーについて、それぞれの制作意図、訴求点は下記の通りとなります。
2.経歴を問わず、成長できる環境。
3.働きやすさ。社員を大切にする会社の姿勢。
4.会社の成長性・将来性。
5.仕事の簡単さ。取り組みやすさ。
6.事業の優位性。ニッチ性。
キャッチコピーだけでも十分に伝わるとは思いますが、必要に応じてキャッチコピー以下ボディコピー(本文)での捕捉説明を行います。
余談ですが、数値の見せ方を工夫すれば、「ウチの会社は計算上、およそ3日に1日は休んでいることになります」などのキャッチコピーが作れます。これは、よく考えれば、年間休日120日以上だと言っているに過ぎず、その事実を別の角度から見せているだけです。ある程度のインパクトは出せますので1回くらいは使えるかもしれませんが、小手先の技術で何とかしようとするよりも、際立った事実をしっかりと探すようにしてください。
求む、特徴的なポジション。
「求む、有名人。」と似ていますが、こちらはポジション名を工夫します。もちろん、「求む、営業」などとしても何の意味もありません。キャッチコピーを作るといより、ポジション名を考えることが重要になります。具体例を見てみましょう。下記の「※」は実際のポジション名です。比較してみてください。
2.求む、ネジの仕分けスタッフ。
3.求む、タイの工場長。
4.求む、ユーチューバーのマネージャー。
5.求む、大将。 ※ラーメン店の店長
6.求む、旅人。 ※全国行脚の販売スタッフ
前提として、募集のポジションが変わっているか、希少性が高くないと成り立ちません。また、ポジション名によっては、単に言葉を変えただけとも捉えられるので、ボディコピーなどでしっかりとした説明が必要になります。例えば、上記の「5」は「大将」という言葉で、親分肌の人材を求め、業務には権限を持って臨めることが読み取れますが、補足説明はあったほうがいいでしょう。
もちろん、このキャッチコピーも必ずしも「求む」で始める必要はありません。例えば、「2」ですと「タイの工場長になりませんか」のような見せ方も可能です。いずれにせよ、肝心なのは、ポジションです。中途採用では、珍しいポジションを募集することが度々あります。そうした時は、ポジションそのものが訴求になることを思い出し、「求む、ポジション名」を試してください。中途採用ならではの求人広告になるでしょう。
以上、3種類の目立つキャッチコピーの作り方を解説しました。言葉をこねくり回すのではない分、作りやすさを実感していただけるはずです。条件さえそろえば今すぐにでも使えるでしょう。それでいて、他社との差別化も十分に図れます。キャッチコピーというと、言葉遊びのように考える傾向も散見されますが、発想の転換や事実の発掘に重きを置くほうが、より大きな効果をもたらします。今回ご紹介したキャッチコピーを使用し、良い人材の採用を実現していただければ、これに勝る喜びはありません。
まとめ
・有名人の名を借りて、ターゲットに訴求する。
・ただし、フリーライドの注意が必要、基本的には許可を得る。
・際立った事実を発掘したら、それをそのままキャッチコピーにしてしまう。
・際立った事実をより強く伝えるために、数値を抑えておく。
・珍しいポジションでの募集なら、ポジション名を工夫してキャッチコピーにしてみる。