新型コロナウイルスは景気にどのくらい影響を及ぼしているのか。肌感覚では、はっきりマイナスの影響が感じ取れると思います。日銀が1日に発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)で、数値としてもそのことが示されました。短観をはじめ、雇用情勢に関わる数値を見ていきます。なお、短観の調査は、所定の調査表またはオンラインによって行われ今回6月回答期間は5月28日~6月30日です。新型コロナウイルスの影響下の数値であり、企業の景気実感が悪化している実態がうかがえます。
景気は後退、企業には人余り感
新型コロナウイルスの影響が経済に大きな影響を及ぼしていることが、日銀短観で浮き彫りになりました。短観によれば、業況判断を示す数値が、製造業でマイナス39ポイント、非製造業でマイナス25ポイント(いずれも大企業・中堅企業・中小企業の合計値)となっています。景気が良いと判断している業界は、建設や情報サービスなどごく一部に限られていますが、景気が良いと判断している業界でも、前回調査(3月)からは数値が下がっています。全体として、この低水準は11年ぶり急落で、リーマン・ショック時に匹敵します。
雇用情勢に目を転じると、雇用人員判断は製造業で11ポイント、非製造業でマイナス17ポイント(いずれも大企業・中堅企業・中小企業の合計値)となりました。変化幅は前回調査(3月)から、それぞれ26ポイント、20ポイントとなっています。雇用人員判断は「過剰-不足」で算出されますので、プラスは人員が過剰と判断しているということです。つまり、企業全体に人余り感が広がっていると判断されます。
細かく見ると、特に変化が大きいのが自動車で、57ポイント(前回マイナス6)でした。このほか、食料品が6ポイント(同マイナス27)、生産用機械が15ポイント(同マイナス16)、対個人サービスがマイナス5ポイント(同マイナス44)、宿泊・飲食サービスが21ポイント(同マイナス26)などとなっており、大きな振れ幅を示す産業が多く見受けられました。
求人倍率、求人数に大きな落ち込み。
さらに雇用情勢を見ていきます。新型コロナウイルス感染拡大に関連した解雇や雇い止めが見込みを含めて7月1日時点で3万1710人になったと厚生労働省から発表されました。6月4日に2万人を超えてから約1カ月で1万人増えた計算になります。緊急事態宣言は全面的に解除されていますが、雇用情勢は悪化の一途をたどっています。
5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍で、前月を0.12ポイント下回りました。この下げ幅は1974年1月以来、46年4カ月ぶりの大きさです。有効求人(同)は前月に比べ8.6%減となり、有効求職者(同)は0.7%増となっています。新規求人を前年同月と比較すると32.1%減となりました。産業別に見ると、宿泊業・飲食サービス業(55.9%減)、生活関連サービス業・娯楽業(44.2%減)、製造業(42.8%減)などとなっています。
求人広告の掲載件数は、全国求人情報協会によれば、5月は全体で62万6,328件(対前年比同月比57.8%減)でした(さらに詳しくはこちらもご参照ください)。完全失業者数は198万人で、2017年5月以来3年ぶりの高水準となっています。前年同月比では33万人の増加で、4か月連続の増加となりました。
また、5月の労働力調査(6月30日公表、総務省)によれば、休業者は423万人(正規・非正規、自営業者含む)に上っています。4月と比較すると597万人から約170万人減っています。一定の歯止めはかかっていますが、前年同月比では274万人増で、高止まりが続いています。雇用情勢は予断を許さない状況となっています。
(まとめ)
・経済状況は悪化。
・企業に人余り感。
・有効求人倍率は大きな下げ幅を記録。
・求人広告の掲載は大きく落ち込む。
・完全失業者数は高水準なった。