一度は落ち着いたかに見えた新型コロナウイルスですが、ここにきて(2020年8月4日現在)、感染者が増えるなど新たな脅威の側面を見せています。これに伴い、一旦は中途採用を再開した企業も再び、採用を控えることも増えてきました。一方で、現在と将来の人材の必要を鑑み、採用を続けているケースもあります。採用を続けている企業が、一つの課題と感じているのが採用活動の実施の方法です。具体的にはオンライン化で、従来通りの対面式を続けるのに安全・衛生面などの観点から戸惑いを持つことが少なからずあります。反面、採用活動(主に面接)をオンラインで実施することに抵抗もあるようです。今回は、中途採用のオンライン化について見ていきたいと思います。
新卒採用ではオンライン化は一つの流れ。
中途採用は、実施する企業の事情が個々に大きく異なり、また、採用の時期もターゲットもバラバラのため、全体的な動きは捉えにくい傾向にあります。そこで、全体的な動きを知るために一度、新卒採用に目を向けてみることにします。
新卒採用では、オンライン化は一つの大きな流れです。ここ数年で地方在住の学生や海外に留学中の学生を採用するためにオンラインでの採用を導入する企業が一部でありましたが、本年2020年、つまり2021年新卒者向けの採用活動は大きく異なる様相を呈しました。言うまでもなく、新型コロナウイルスの影響で対面や集合型のイベントが開催にしにくくなり、オンラインに切り替えたのです。
これまでは、IT環境の未整備でオンライン化に二の足を踏むケースもありました。しかし、テレワークの推進でIT環境が整ったことをはじめ、リモートで仕事を進めても意外と困らなかったという心理的な好影響もあり、採用活動でのオンラインの導入も進んだようです。実はIT環境といっても、パソコンと無料のアプリケーションがあれば十分なので、たいした準備も費用も不要です。実際にテレワークを行ってみて、そのことがわかったのが、採用活動のオンライン化を促進したのではないかと感じています。
また、学生はオンライン化に肯定的です。新卒採用の場合は、インターシップ、説明会、面接と、中途採用に比べて内定が出るまでに相当な時間を要するのが一般的です。就職活動の費用や手間暇を考えれば、肯定的になるのは十分にうなずけるでしょう。一部では、対面の採用活動を続ける企業に対し、企業体質を疑う向きがあるようですが、これについては、いかにも学生らしい反応と思わなくもありません。
中途採用こそオンラインが向いているのでは。
中途採用の場合、オンラインを活かす場面と言えば、ほぼ面接に限られます。新卒採用のように一度に多くの人材が集まる機会はそれほど多くありません。転職フェアなどの企業展を除けば、数百人単位で人材が集まる機会を除けば、ほぼ皆無と言ってもいいでしょう。会社説明会を実施するケースも少なく、面接も多くて1日数人。いわゆる「3密」となることはほとんど想定できず、安全・衛生面の観点からは、必要性はあまり高くないと言えるかもしれません。
しかし、中途採用こそ、オンラインの活用が望ましいのではないかと考えています。その大きな理由はスピード感と利便性です。中途採用を行う企業は、明日にでも人材に来てほしいという要望を持つことは少なくありません。その一方で、募集から応募、内定、入社まで数カ月を要することがほとんどです。新卒採用と比べればかなりスピーディですが、退社手続きや有休消化などの関係で、内定後に時間がかかってしまうケースがあり、これは採用企業からはなかなかコントロールが難しいところです。短縮できるとすれば、応募から内定の期間で、この時に大きな威力を発揮するのがオンライン面接です。
中途採用を行うネックの一つとなるのが、採用候補者と採用部署との面接の設定です。互いに仕事をしている場合が多く、都合がつけにくい現状があります。しかし、オンラインであれば、移動を伴わない分、予定を組むのがかなり楽になります。採用候補者にとっては一つの魅力ともなります。転職の場合は、最初に内定が出たところに入社するという意志を見せる人がかなります。早期に面接の日程を組むことが、有利に働くことは間違いありません。
また、海外を含め、遠方の在住者を採用する場合にもオンラインはとても有効です。地元へのUターンなどを望んでいる人は一定数います。対して、企業はUIターン歓迎とうたいながらも、特別な措置をとっていないことが少なくありませんでした。面接の交通費や引っ越し代までは負担できないにしても、オンライン面接は可能なことが多いはずです。オンライン面接を実施することは、応募者にとって十分なメリットとなるでしょう。
一気に広がる可能性も
中途採用でのオンライン面接は、随分早くからやっているところはやっているという状況でした。IT企業はもちろんのこと、非IT企業でもオンラインシステムの積極的な活用は見られました。また、一部の求人サイトではオンライン(動画)面接の機能がついており、少なくとも数年前には導入が進められていました。
ただ、やっているところはやっているという状況のまま数年間、推移しました。中途採用はスキル重視も少なくなく、面接はほとんど顔合わせみたいな感じで進むこと多いため、本来であればオンライン面接との相性はとてもいいはずです。それなのに導入が進まなかった理由としては、一回くらいは本人に会っておきたいという要望があったと考えられます。
しかし、テレワークの導入などで、実際に会わないことに対する抵抗は薄れたと思います。もちろん、実際に会ったほうが視覚から入ってくる情報は格段に多いのですが、採用の可否を決定づける決定的な理由となるかどうかは別問題でしょう(職種にもよりますが)。
※コロナ禍でWeb面接が注目されていることはこちらで紹介しています。
なお、私事で恐縮ですが、私はオンライン面接を受けて入社した経験を持っています。今から20年近く前のことなので、かなり先駆けていますね。といっても、正確には、テレビ会議システムでの面接で、最寄りの支社に行って直属の上司となる人と実際に会って面接し、その後、部門長と担当役員とテレビ会議システムで面接しました。部門長と役員は本社(東京)勤務で、本来なら支社での面接後、別日程で東京で面接の予定でした。しかし、それには時間もかかるし負担も大きいだろうとのことで便宜を図ってくれたようでした。当時は地方在住だったので、とてもありがたい措置でした。
直属の上司以外とは会ってないわけですが、それで困ったということはありません。向こうの雰囲気は伝わってきましたし、こちらの雰囲気も感じ取ってくれたと思います(採用されたわけですからね、何らかの判断はしているはずです)。直属の上司とは会っているから問題なかったのだろうという声があるかもしれませんが、中途採用では直属の上司と会わないまま採用されるということがけっこうあり、私自身、別の会社では直属の上司と会わないまま採用されました(私は転職を2回しています)。それでも困ったことは特になかったので(自分で言うのもなんですが、いずれの会社でも入社後はそれなりのパフォーマンスは残しているので)、結局、誰と直接会って面接するかということは、さほど重要なポイントではないのかもしれません。
新型コロナウイルスの影響で仕事のスタイルが大きく変わりました。新型コロナウイルスの影響がまったくなくなったとしても、例えば、テレワークがそれでなくなるということにはならないでしょう。新卒採用では、これまでのオフラインの選考過程がオンラインに入れ替わるなどしており、この流れも、止まらないように思えます。同様に中途採用でも、この機会にオンラインの活用が加速してもいいのではないかと考えています。
(まとめ)
・コロナ禍で採用活動のオンライン化が進む。
・新卒採用ではオンラインも当たり前になりつつある。
・中途採用は数年前から、Web面接などオンラインの活用は推奨されていた。
・ただし、やっているところはやっているという状況。
・オンラインの活用は時間に制約のある社会人に適しているのではないか。
・コロナ禍でオンライン化が一気に導入が進む可能性も考えられる。