レイオフと日本の雇用

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新型コロナウィルスの影響が勢いをとどめることなく広まっています。世界的に不況の波が押し寄せており、雇用に与えるダメージが非常に大きくなっています。海外の情勢も多く伝えられていますが、その中で、レイオフという言葉を頻繁に耳にするようになりました。簡単に「一時解雇」などと訳されていますが、どのような意味を持つのでしょうか。中途採用に携わる立場としては、解雇・退職、入社までについては一通りおさえなくてはならないことです。レイオフを解説すると共に、レイオフを通じて国内と海外の雇用のあり方を比較してみたいと思います。

アメリカでのレイオフの実態

海外(主にアメリカ)の記事などを読んでいると、レイオフという言葉が当たり前のように出てきます。記事の中では概ね「一時解雇」と訳されています。この訳語からは、一時的な解雇であり将来状況が変われば改めて雇用する、言ってみれば雇用に関する優遇措置付きの解雇と解釈できます。「今は不況で二進も三進もいかないけど、好転すればまたウチで頑張ってほしい。それまで待っていてくれ」と言ったところでしょうか。これだけを聞くと、非常に合理的で現実的な措置のような気がするのですが、考えれば考えるほど解雇と何が変わるのかと思えてきます。

もっとも疑問に感じたのが、いつ再雇用されるのか、ということです。アメリカの事例などを見ると、再雇用される順番は決められることがあるようですが、いつ再雇用となるのか触れられていません。ということは、何の保証もないまま、数カ月、下手をすれば数年の間待っていなければならない、ということになってしまいます。

仮に1年後には再雇用すると保証があったとしても、ちょっと長すぎます。1年間収入なしはかなり厳しいでしょう。失業手当がもらえるにしても、収入は確実に半分以下になります。それなら、敢えて声がかかるのを待つことなどせず、就職先を探したほうが手っ取り早いように思えてきます。実際、アメリカでのレイオフは解雇とほぼ同意義のようです。つまり、再雇用の見込みはほぼなく、恒久的に解雇されるのが現状とのこと。海外ニュースにレイオフと出てきたら、解雇と読み替えたほうがいいでしょう。

レイオフと失業手当

上記で「失業手当がもらえるにしても」と記述しましたが、ここで仮に日本でレイオフを行った場合、失業手当がもらえるかどうか、考えてみたいと思います。雇用保険法には以下の記述があります。

第四条 
2 この法律において「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。
3 この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

第十条の二 求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。

このうち、「職業に就くことができない状態」とは、「職業安定所(ハローワーク)が受給者(退職した人)の求職の申し込みに応じて最大限の努力をしたが、就職させることができず、また、本人の努力によっても就職できない状態」なので、単に離職しただけでは失業と言えないことがわかります。そもそも制度の趣旨が、求職活動している間の生活の安定を図るものと言えるので、レイオフ=一時解雇=就職先が決まっていると解釈されたら、失業手当の受給を申請する上では不利に働くようにも感じます。ハローワークが申請をすんなり受け入れてくれれば問題ないとは思うのですが、少々自信のないところです。

日本では簡単に解雇とはならない

よくご存じのように、日本の場合は、解雇するに当たり少なくとも30日前に予告をする必要があります。この30日というのは、再就職先を見つけるための猶予期間で、使用者(会社側)には猶予期間を与える義務があるとされています。予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。また、10日前に予告して20日分以上の平均賃金を支払うなど、予告できなかった分は賃金で補うことも可能となっています。なお、平均賃金は「対象の労働者に3カ月間に支払われた賃金の総額を総歴日数で割った金額」です。

ただ、日本の場合は、30日分の賃金を払えば解雇できるというものでないことも広く知られています。業績不振で解雇せざるを得ない場合でも、(整理)解雇は最後の最後の手段で、それ以前に相当な経営努力が求められます。いわゆる整理解雇の四要件というものです。解雇に関する規定が取り決められている労働基準法は基本的に雇用される側を守る法律なので、「レイオフです、一旦雇うのやめます」というのが通用するのかちょっと不明です。

よくアメリカの映画やドラマなどで、クビだとか言って明日から来なくていい荷物をまとめろと段ボールを渡されるシーンを見ますが、日本の場合ではまずあり得ない光景です。上記の通り少なくとも30日の猶予はありますし、会社側としても引継ぎなどがありますのでいきなり会社に来なくなっても困るのではないでしょうか。海外では情報漏洩の観点からも、退職が決まった人材になるべく社内に出入りしてほしくないとのこと。さっさと出ていけという扱いだそうですので、送別会を開き労をねぎらう日本人の感覚には馴染まないところが多そうです。

なお、退職から再就職先への入社までの期間の長さは、日本と海外の大きな違いの一つです。日本の場合は有休を100%消化している人は少ないので、退職後も有休消化期間として籍だけでは会社に残っていることが多いと思います。その間に再就職先へ入社することは基本的にはないので、内定から入社まで、数週間~1カ月の間が空くことはしばしばあります。当然、求人を出してから応募、内定までも一定の期間を要するので、中途採用を進める場合は、この期間も考慮し、迅速に動くことが求められます

以上、レイオフを通じて、国内の雇用のあり方の一端を見てきました。新型コロナウィルスの影響を受け、雇用情勢はこれから大きく変化していくはずです。働き方や雇用のあり方が変わる可能性があることも、このサイトを通じて述べてきました。これと同時に、中途採用に対する考えや姿勢も問い直す必要があるかもしれません。このことについても、しっかりと考えてみたいと思っています。

(まとめ)
・レイオフは一時解雇と訳される。
・ただし、海外(アメリカ)では恒久的な解雇とほぼ同意義。
・日本でレイオフがあった場合、失業手当がもらえるか要チェック。
・その前に、日本の場合は即日解雇は基本不可。

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