【現場系】転職サイトの求人広告 製造/倉庫スタッフなどの作り方

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物流や陸運、工場、倉庫、土木、建築、内装など、いわゆる現場系の職種は、採用難易度が高い傾向にあります。実際、安易な広告設計をしてしまっては、応募・採用につながらないことが少なくありません。私はコピーライターとして人材業界に入ってから、現場系の職種には多く携わってきました。その過程で培ったノウハウや知見などをここで紹介させていただこうと思います。現場系といっても、広告作成の基本的な考え方が異なるということはありません(こちらを参照してください)。ただ、全体的な傾向や他の職種と異なる特徴もありますので、ここで紹介したことを、求人広告の作成はもちろんのこと、求人・採用活動の全般にわたり活かしていただければ幸いです。

今回は製造・倉庫スタッフ(非手に職系)に焦点を当てて解説いたします。募集のターゲットは未経験とします。
こちらはドライバー(物流系)の記事ですが、現場系職種全体に関する話題に触れています。参照していただければ幸いです。

ありのままを描く。

製造・倉庫スタッフ(非手に職系)というと、何か技術力が身につくわけでもなく、業務内容はシンプルで淡々としており、有り体に言ってしまえばルーチンワークで打ち出すポイントが難しい――。こうした声がしばしば聞かれます。非常に真摯な姿勢で求人広告の作成に臨んでおり、まじめであればあるほどこうした考えに陥ってしまうようですが、そうした時はぜひ発想を大きく転換してほしいと思います。

打ち出すポイントは、あくまでターゲットにとって魅力となることです。おそらく、魅力がないというのは、「自分にとって」ということだと思います。価値判断をする基準を自分にしてしまっています。もちろん、自身で価値判断をするのは大切ですし、主観はなくせるものではありません。しかし、求人広告の作成では、常にターゲットの目線を意識しなければならない。ターゲットが魅力に感じるだろうことを打ち出すポイントとするのです。

もっと言うと、ルーチンワークならルーチンワークを魅力に感じるだろう人材をターゲットにします。すると、仕事内容そのものが魅力になるので、仕事内容を全面的に打ち出し求人広告を作成することになります。実際、とても簡単な仕事、誰でもすぐにできてしまう仕事、という一見「魅力」を感じられない仕事内容を訴求点にしてうまくいった例は多くあります。打ち出すポイントがないなどと考えず、ありのままを描いてみてください。これまでに「ダンボールに部品を詰めるだけ」「部品を手で箱から箱へと移す仕事です」「毎日、カッターで厚紙を切ります」というような訴求点で多くの応募を集め、採用に実現してきました。ほとんど仕事内容をそのまま表したような訴求点ですが、これで十分にうまくいくのです。

ターゲットにとっての魅力を見つめる

反対に、仕事内容を自身の主観で捉えすぎて作ったような「魅力」で打ち出そうとしては、失敗するケースもあります。こじつけたことは読み手にも伝わるのでしょう。反響を得られません。実例としてこんなことがありました。「この原稿で出稿しても応募も来ないし採用にも至らない。どうしたらいいか」という相談を受けた時のことです。原稿に目を通すと「部品を箱詰めする仕事ですが、箱詰めには創意工夫が必要で、熟練の技術が求められます。そんな仕事に挑戦してみませんか」という内容でした。

正直、「無理やり感がある」と感じました。仕事についての実際を知りたかったので、改めて取材の設定をしました。そうしたところ、「箱詰めに工夫がいるのは間違いないが、半月もすれば慣れる」ということでした。どうやら、取材した内容を少々強引に方向転換して原稿を作成したようです。確かに、取材した内容をそのまま書くのは、コピーライティングではありません。しかし、自分の解釈で強引に捻じ曲げ、事実と異なることを書いてしまうのはいかにも不誠実です。

取材させていただいた方の話しぶりから、仕事は好きで続けているが、その魅力は創意工夫をするところではないということは明らかだと感じられました。「楽な仕事だし、だいたい時間通りに仕事が片付くし、みんな気のいい人たちだから、ここで働いている」というのが、本心のようでした。これを受け、上記の仕事内容そのものを打ち出すということを意識しながら、全面的に求人広告を変えて改めて出稿しました。その結果、応募数も大きく改善し、採用も成功しました。

なお、ルーチンワークだから、簡単な仕事だから、魅力がないというのは、やや乱暴なものの見方のように感じます。そうした仕事を好む人がいるのは間違いのないことです。自分の知っている「魅力」がない、だから、「魅力的」に仕立ててやろうという発想は避けるべきことだと考えています。
こちらにもそのことを書きました。参考までに。

一緒に働く仲間は重要なポイントの一つ

製造・倉庫スタッフ系の職種では、一緒に働く仲間を前面に打ち出すことがしばしばあります(最近ではあまり見られなくなりましたが)。この背景には、同僚や上司から受け入れられたいという欲求、帰属意識が強く働いていると考えられます。他方、出世やスキルアップ、創造性の発揮などへの欲求は低いと考えられます。

実際、取材をしていると「休憩時間が楽しい」「終業後にいつも遊びにいっている」という声を聞くことは少なくありません。「休憩時間が本当に楽しいんだ」とあまりに強く言うので、それを打ち出しにしたことがあります。結果が出るのか疑問もあり、それをメインの打ち出しとするか最後まで悩みましたが、想像していたより応募が集まったので、一定の効果はあると考えられます。

一方、近年は、世の中全体が仕事は仕事と割り切る風潮が強まり、「職場の仲間と遊んでいる」ということをメインの打ち出しにする機会が減っている傾向にあります。しかし、どんな仲間と働くか、同僚や上司、その関係性などの情報が重要であることには変わりありません。メインの打ち出しとするかどうかは別にして、一緒に働く仲間の情報は詳述したほうがいいでしょう。

ただし、誤解なく。良好な人間関係を伝えることは重要ですが、良好な人間関係とは必ずしもベタベタした人間関係ではありません。休憩時間や終業後に一緒に遊んでいなくても良好な人間関係は築けます。例えば、過度な干渉はしないが、共に働く仲間として互いに協力し合う関係も極めて良好と言えます。事実を無理に捻じ曲げる必要はありません。自社の実態に合わせてターゲットを設定します。この点は仕事内容で真実を伝えたのとまったく同じです。

また、昨今は就業環境(特に残業時間)を気にする傾向がありますが、製造・倉庫スタッフももちろん、同じです。と言いますか、この職種に関しては、昨今のように言われる以前から、残業がないあるいは少ないということが半ば前提になっていました。定時に上がれるからこの仕事を選んだ(そして続けている)という声が多いのです。

従って、残業がないあるいは少ないことは、差別化にならない可能性も考えられます。採用上の競合他社が出稿する求人広告との兼ね合いで、残業時間に関する情報をどのように見せるのかを決定するのは一つの方策です。残業がないあるいは少ないことを強調する求人広告が多い場合は残業に関する話題は事実を記載するにとどめ、反対にそうした企業があまりない場合はメインの打ち出しとしてみることも有効でしょう。いずれにせよ、就業環境に関することは、何らかの形で伝えることが求められます。

以上、製造・倉庫スタッフ(非手に職系)に関し、求人広告作成のポイントについて解説いたしました。全体として、シンプルに求人広告を作成するようなイメージを持たれたかもしれませんが、表現方法はさまざまですので、工夫のしがいがあります。また、「こういう仕事もあったんだ」という出合いが多くあることも、この職種の一つの特徴だと感じています。奇をてらう必要はありませんが、独自の切り口で仕事を見せることで、ぜひターゲットを引き付ける求人広告を作成していただければと思います。

まとめ

・ターゲットにとっての魅力を考える。
・仕事内容そのものが訴求ポイントとなることは多い。
・恣意的な判断で仕事の魅力を考えない。
・一緒に働く仲間の情報は大事。
・残業はないか少ないかがこの職種の一つの特徴。

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